あなたの色に染められて
第18章 Re:Start
球場から程近い コンビニの前を通りすぎる。
あれ?
京介さんの顔を覗くと
クスッと笑って
『近すぎると追ってくるから。』
あぁ。
事故から3ヶ月。
私たちの距離は縮まってきた。だってこんな風に助手席に乗って 彼と二人だけの空間にいるんだから。
でも 前は車を運転しながらも指を絡めることがあったっけ。
体はもうすっかり元気なのに…記憶は相変わらず戻ってはいないなんて。
『…璃子ちゃん』
名前も“ちゃん”づけ。お付き合いをする前も“ちゃん”づけだったよね。
『アイスいくつ買うの?』
呼び捨てにされて あぁ 彼女になったんだって嬉しく思ったもんね。
『5こかな。でも増えるかもです。』
私も体を重ねたときは『京介』って呼んだこともあったなぁ。
『俺。からあげくん食べたい。』
そうそう。二人で少し早いクリスマスもしたよね。たくさんたくさん愛してもらって このステキなネックレスをもらったんだ。
『京介さんはからあげすきですもんね。』
京介さんはネクタイピンまだ付けてくれていますか?
『…璃子ちゃん。なんで俺がからあげ好きなの知ってんの?』
『えっ?』
知ってるよ。カレーも好きなんだよね。
『……あっ。…イヤ。ほら。男の人ってみんなからあげ好きじゃないですか。』
カレーも。パスタも。私が作るものいつも “うまいうまい”ってたくさん食べてくれたもんね。
『まぁ。そうか。…璃子ちゃんは何が好きなの?』
私の好きなもの忘れちゃったもんね。
『じゃあ。当ててください。』
私たちの思い出のもの。
『ヒントちょうだいよ。』
京介さんと始めて二人で食事したときに 食べたデザート。
『…甘くて……苦いの。ふふっ』
まるで私たちみたいだって 夏樹さんが言ってくれたよね。
『甘くて苦いの?……なんだよそれ。』
記憶が無くなる前なら答えられてたかな。
『はい。時間切れー。残念でしたぁ。』
ちょうどコンビニに着くなんて
『うっそぉ~。』
きっと“アフォガード”って答えられないから
『アイスおごってもらおうっと。』
私を忘れてるんだもん。これぐらいいいよね。
『…ハイハイ。なんでもかってあげるよ。』
……やっぱり。
……私たちのこと 思いだしてほしいな