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あなたの色に染められて

第3章 二人で


あれから 時間を見つけては美紀と球場に足を運び応援に行った。

野球をしている京介さんは本当に楽しそうで病院で会うあのクールさはまるでなく、少年のようにキラキラと輝いていて

『京介さん楽しそうだね。』

『うん。野球してる京介さんはホントにいい顔。』

ここぞ!という場面で打ったり 白球を追いかけるその姿に私は釘付けだった。

『ほら見て。京介さん璃子に手振ってるよ。』

『…うん…』

私も胸の前で小さく手を振りかえす。

そんな姿を見ていた美紀はフェンスに寄りかかると私をチラリと見て

『なーんか 心配して損したかも。』

『どうして?』

意味深にクスクスと笑い出すと

『もう 京介さんにちゃんと向き合えてるんじゃないの?同じ気持ちなんじゃないの?』

『…。』

美紀に隠したってすぐにバレてしまうから正直に話すしかないけど

『ちゃんと好きになれたんでしょ?』

『…かな。まだわかんないけど。』

往生際の悪い私。

『じゃあ質問、京介さんに逢いたいと思う?』

『そりゃ…逢いたいよ。』

『そばにいたいと思う?』

『まぁ…いたいかな…』

『お話ししたいと思う?二人で笑ったり いじめられたり…』

『いじめられるのは…でもお話はしたい。』

わかってる。もう私の心は京介さんに向いてる。

『ほらね。好きなんじゃん。ほかに何がいるの? ちゃんと自分の気持ち伝えなきゃ。大好きです!って。』

『だっっ!大好きですって?!…私から?!』

わかってはいるけど 今まで男の人と話すことだって大変だったのにそんな…

告白なんてハードルが高すぎるよ…

『ハァ…じゃあ誰がするのよ。京介さんは璃子のこと考えていろんな事我慢して待っててくれてるでしょ?いないよ。あんなにイケメンで璃子のことまっすぐに見てくれる人なんて。』

『…そんなのわかってるよ。』

わかっちゃいるけど…

『取られちゃっても知らないよ!』

『取られる?!えっ!!誰に?』

『まったく…言ったでしょ?あれだけの人だよ。事務のお姉さま方も狙ってるんじゃなかったっけ?』

美紀は私の顔を覗きこんで

『…そうだよね。』

いつまでも誰かに甘えちゃダメなんだよね。

やっと気持ちが通じる人に出会えたんだ。

勇気を出さなきゃ…始まらないんだ。

『しっかりしなさい!璃子!』

そう。始めたいんだ。

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