あなたの色に染められて
第19章 約束
『遥香!どうなってんだよ!』
女の胸ぐらを掴んだのははじめてだった。
『なんで佑樹がそんなに怒るのぉ』
『お前 京介と璃子ちゃんの気持ちなんだと思ってんだよ!』
『そんなの知らないわよ。第一 京介がすっかり忘れちゃってんだから』
こんなことなら 京介に璃子ちゃんとのことすべて話して ぶん殴ってでも思い出させるんだった。
美紀ちゃんからこの話を聞いたのはついさっき
もう1ヶ月以上も璃子ちゃんが顔を出さないから心配になって聞いてみたらこれだよ。
『マジで許さねぇ。もう仲間なんかじゃねぇから』
どんな言葉を遥香に投げ付けても 式場巡りをしてるアイツには全く痛くはない。
***
『ホントに遥香さんと結婚するんですか?』
『あぁ。俺も年貢の納め時らしいよ』
なに笑ってんだよ。京介さんには璃子ちゃんしかいなかったじゃない
『璃子ちゃんと仲良かったのに何にもなかったの?』
『あぁ。フフッ。彼氏いんだよ』
『はぁ?』
…彼氏は京介さんだろ
『すげぇ大事にされてて 愛してるの意味を教えてくれて 世界中の誰よりも愛してるんだって』
『…なにそれ。』
京介さんの背中越しに見える夕陽がやけに綺麗だった。
『直接言われたの。二人でアイス買いにいった日。振られたの俺』
なに笑ってんの?
『それって…。その愛してるって…』
『俺ね先週 式場巡りのホテルで璃子ちゃんと彼にバッタリ会っちゃって。』
…彼氏って?
『少し話してさ そのあと二人仲良く客室のあるフロアに降りるとこまで見ちゃったわけ。キツいったらねぇよ。』
勘違いだろ それって。
『いい男だったでしょ。京介さん。』
美紀 お前までなに言ってんの?
『あぁ 相手が医者じゃな。諦めるしかねぇよな。』
俺は美紀の目をじっと見つめたけど 首を横に振るだけで
『あの子幸せにしてますよ。大きな愛に包まれて ワガママ言い放題で。』
『あの璃子ちゃんが?…ワガママ?』
『はい ワガママ言ってます。でも 忘れないでいてあげてください。』
『忘れないよ だって…痛っ。』
『まだ 頭痛むんですね』
『璃子ちゃんと居ると全然痛くなかったんだけどな。俺の特効薬だったのにな。』
美紀は璃子ちゃんからすべて聞いて納得したんだって
茜色の夕陽がこんなにも苦しい色に見えたのははじめてだった。