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あなたの色に染められて

第20章 点と線



あ~。…マジで痛ぇ。

『京介~!ボール取ってぇ!』

頭が痛いんだっつうの。

俺の目の前に転がってきたボールを佑樹に投げ返す。

近頃アイツらは俺の顔を見るたびに溜め息を吐いている。

その原因は どうやら俺の結婚と

…璃子ちゃんとのこと。

直也と二人揃ってしつこいぐらいに聞いてくる。

だから 俺 すげぇノロケられて振られたんだっつうの。

でも あの日から俺の心にはまたぽっかりと穴があく。事故以来埋められない謎の穴。

あぁ。痛ぇ。…ズキズキするし

ベンチに座り 少しでも痛みを逃したくて 頭を抱える

振られた日以来 また頭痛の回数は増えていく。それも 璃子ちゃんとのことを思えば思うほどに。

……ッツ。……痛ぇ。

ほらな。こうやってフラッシュバックの回数も増えるんだ。何枚かの写真が一瞬光るように写し出されては消え 写し出されては消えの繰り返しで

よく写し出されるのは

この球場の
バックスクリーン横のオレンジ色の空

ホームの横で手を広げてる俺

そして 甘いぬくもり


連想ゲームじゃねぇんだよ。マジ勘弁



それと……たぶん 俺の部屋だと思う

シーツの上で絡めている 柔らかくて白い指先

キッチンのボヤけた緑色の小さな…なんだこれ?

そして 甘い声

俺の部屋のパターンは夢にもよく出てくるだ。

色白で 吸い付く甘い肌を持ち 必死にしがみついてくる女。

……ッツ…。マジで頭割れそうなんだけど…

……なんだよこれ






『きょうすけ~。きょうすけ~!』

……だから。痛いんだって。



ボスっ

うわっ!

『きょうすけ!』

俺の抱えた頭に突進してくるかわいいヤツ。

『ケンタ!! お前~。元気だったかぁ?』

『うん。きょうすけ。たすけてくれてありがとうね。』

かわいいこと言っちゃって~

俺はケンタを抱き上げて 膝上に向い合わせで座らせて頭をガシガシと撫でてやる。

『いたいよぉ。やめろよぉ。キャハハハ』

『うるせぇ。呼び捨てにすんな!おりゃ~』

胸にギュッと抱きしめて

『苦しぃよぉ。きょうすけ!』

ケンタは俺の胸を両手で押して顔をあげ

『ねぇ。 りこちゃんは? おれの りこちゃんは?』

えっ。

お前。なんで璃子ちゃん知ってんの?

『ねぇ!りこちゃんどこにいんの!!』

あぁ。……頭痛ぇ。

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