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あなたの色に染められて

第21章 遠い空





翌日 直也と美紀ちゃんがエントランスの前で二人並んで 仕事帰りの俺を待っていた。

律儀な直也らしい。電話で済ませればいいものを申し訳なさそうに

『昨日 アメリカに発ったみたいで。』

わざわざ伝えに来てくれた。

俺も二人に記憶が戻ったことを報告する。

直也はガクリと肩を落とし その横で美紀ちゃんはずっと泣いてて。

美紀ちゃんに告げていた日は明日だった。今朝 夜勤明けにメールを確認したみたら もう旅立ったあとで

『きっと 璃子も最後まで悩んだんだと思うの。最後に話した時も まだ京介さんの体を心配してたから。迷いを断ち切るために 誰にも言わずに…』

……やっぱり 点と線は交わらないか

『直也も美紀ちゃんも 悪かったな。…俺が悪いんだよ。……感謝してるから』

『京介さん。そんなこと言わないでよ。……もう璃子ちゃんと終わりみたいじゃん』

この期に及んでも 直也はなんとかしたいんだろうな

『美紀ちゃん悪いんだけど ひとつ頼まれてくんない?』

直也はまだまだ俺を知らないな。

少し落ち着いた美紀ちゃんに俺は名刺を渡す。

『なんですか?』

俺は9回裏ツーアウトでも諦めないから。

『そこに俺の電話番号とメアド。裏にはLINEのIDが書いてあるからさ。璃子に伝えて欲しいんだ。きっとこっちの使えなくしてるだろ。』

直也の顔がパット明るくなる。

『京介さん!……もしかして……もしかする?』

はしゃぐ直也を横目に

『美紀ちゃん。璃子に連絡待ってるって伝えて』

美紀ちゃんは直也とは正反対で俺の名刺を見ながら戸惑っていた。

『美紀が新しい連絡先知ったら 京介さんに教えればいいんじゃないの?』

美紀ちゃんは首を横に振る

『直也。それはルール違反。美紀ちゃん困らせんな。』

『はい』なんて言ってるけどきっとこいつのことだから まだ色々考えてるな。

『… 教えても璃子から連絡来ないかもですよ。京介さん…それでもいいんてすか?』

美紀ちゃんは慎重で

『そしたら それでいいんだよ。俺が勝手に待ってるんだから。……悪いな。……郵便屋さんだけやってくれる?』

名刺と俺を交互に見て ひとつ溜め息を吐き頷いてくれた。

『サンキュ。美紀ちゃん。』


三振で終わるか 逆転満塁ホームランか

連絡が来るその日まで 俺はバットを降り続けるしかないよな

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