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あなたの色に染められて

第21章 遠い空




『美紀!』

『……はぁ。…わかった。…話すから』

俺の体をクルッと美紀の方に回して向き合い 大きく深呼吸してから話はじめた。

『…最初に気づいたのは幸乃さんなの。』

『…幸乃さんが?』

『LINEの野球のグループ。ちゃんと全員が確認すれば32。で 璃子が球場に来なくなってから31だったの。』

『ん?…どういうこと?』

美紀は小さく溜め息をついて腕を組み 俺の目をしっかりと見て

『だから。開かずに放置してたから既読が一人分足りなかったのよ。…それが付いてたの。2週間前ぐらいから。』

俺はズボンのポケットからスマホを取りだし確認してみると

『ホントだ。』

確かに既読が32。

『ねっ。それで璃子に個別でLINEしてみたの。…そしたら それまで送ったのにも既読がついて。それから少しずつ電話したりLINEしたり…。』

『…ハァ。で なんで俺に秘密にしたんだよ。』

とりあえず連絡が取れたことにひと安心した。まだ望みはあるってこと…

『…京介さんに言うでしょ。』

『当たり前だろ。すげぇ待ってんだから。』

美紀は俺から視線を外して また溜め息を吐いて

『…それが困るの。…璃子の心を開かせるから それまで言わないで。』

『…ウソつけって言うの?俺に。…ムリムリ。』

京介さんがウソが嫌いなこと知ってんだろって。どれだけ待ってるのかも…

『…だから言いたくなかったんだよ。…璃子ね 泣いてたの。…京介さんが記憶が戻ったこと知って…』

『…LINEしとかなかったの?』

『バカ。大切なことは口で話すんだよ。』

それは美紀の言う通りで

『…もういいって 私は忘れたからって。そう言いながら泣くんだよ。』

『忘れちゃったんだ…』

美紀は首を横に振りながら 何度目かの溜め息を吐き

『逆。…忘れてたら泣かないでしょ。普通。…忘れようとしてんの。ムリなくせに…』

『……。』

それから 美紀に璃子ちゃんがどれだけ先生に大事にしてもらってるかってことを聞いた。

『…なんか複雑。』

『…でしょ。…私は璃子の親友として直也にお願いする。…言わないで。』

一度狂った歯車は記憶が戻ったからってすぐには元には戻らない。

『……マジか。』

誰のために動けばいいのか…

窓の外の真っ暗な空

繋がってるのは空だけなのか…

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