あなたの色に染められて
第21章 遠い空
『もしも~し……あっ。……おはよ。…大丈夫…』
片手で俺にゴメンと申し訳なさそうしながらベランダに出ていく美紀
『まただよ…』
ベッドの上。美紀を腕の中に閉じ込めて これからって時に邪魔される。たしか先週もじゃなかったっけ。
『……ふざけんなよ。』
声は聞こえないけど ずいぶんと楽しそうに時に手をバタバタと動かしながら電話しているアイツ
『……誰なんだよ。』
ハァ…… 他の男だったりして…
『マジ ムカつくんだけど…』
確か先週もこのぐらいの時間だったなって… そんで“おはよ” って。何の商売してるんだって。
テレビを付けてもつまらない深夜番組ばかりで
……コンコン
少し睨みをきかせて急かす俺。
さっきと同じようにゴメンゴメンとジェスチャーで表す割には電話を切る気配は感じられない
やっぱり…男?
でも 俺の前だぜ…。堂々としすぎじゃね?
ゆっくりと窓の方へと体を寄せて テレビのボリュームを目一杯下げて右耳に全神経を集中させる
『……ャハハ。……らな…よ……だし……』
聴こえる 聴こえる!
『……子……だけ………川野…』
…川野?
オイオイちょっと待て。目を瞑りひとつ大きく深呼吸して もう一度 右耳に全神経を集中させる
『……ゃあまたね…璃子…』
……ウソだろ。
まだ連絡とれてないって先週話してたよな。
京介さん待ってるから頼むぞって俺言ったよな。
ガラ
『外 ちょー暑い。……ゴメンねぇ』
美紀は後ろから抱きついて甘えて
『……ねぇ。直也…』
『…美紀…俺にわかるように説明して』
俺の首に回した腕にほんの少し力が入った。
『なんで璃子ちゃんと話してんの?…知らないんじゃないの…』
首に絡めた腕を外してペシャリと床に座り込み
『…ハァ。…聞いてたの?』
『聞こえたの。』
そんなのどうでもいいんだよ。
『……ムカつく。』
『……ちゃんと説明しろよ。ちゃんと!』
俺 なんでここまでムキになってんだろ
美紀が俺に内緒にしてるから? 美紀のことだから絶対に理由あるはずなのに…
『美紀!』