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あなたの色に染められて

第22章 揺れる思い



『……また 美紀ちゃん?』


ちょうど電話を切って キッチンで朝食のコーヒーを用意しているときだった

『ゴメンね。起こしちゃった?』

『……ずいぶんと楽しそうだったじゃん』

そう言いながら 腰に手を回してお決まりのおはようのキス

『おはよ。相変わらず すっごい元気だった。』

コーヒーを渡してテーブルに着いて朝食をとる


たっちゃんに抱いてもらった夜から なんとなく気持ちが吹っ切れた気がして 日本で使っていたスマホの電源を思いきって入れた1ヶ月前。

そこには大量のLINEが送られていて どれから開けてみようかと悩んだ私は一番遠ざけていた野球のグループを選んだ。

それはほんの出来心で。でも 自分がどのぐらい前を向けてるかのバロメーターじゃないかなって思ったからだと思う。

開いてみると そこには集合時間やミーティング場所の変更。誰かの出欠の有無。試合中の誰かの取った写メ……

なんでもない慣れ親しんだ日常が繰り広げられていた。

おっ。やったね!夏の大会も優勝したんだ。

トロフィーと賞状を持って 少年のように喜ぶいつものメンバーの集合写真もあった。

美紀は直也さんに肩を抱かれて両手を前に出してピースして

あっ。ケンタくん

前列の真ん中に長谷川さんの大きな帽子を被って大きな口を開けて…

…カワイイ。…やっぱり私の王子様。


そして……

目を瞑り大きく深呼吸して ゆっくりと目を開けて

……いた。

誰よりも愛しかった人は佑樹さんと肩を組みながら笑ってた。

そっと指で彼の顔を撫でる。

……おめでと。

大好きだったこの笑顔。

毎週毎週 野球三昧でデートなんて片手で数えられるほどだったっけ。

少し痩せたかな… ちゃんと食べてるかな…

……ダメダメ。もう忘れたんでしょ。

不思議だった。きっともっと色々な思いが溢れるんじゃないかって思ってたから。


それから数日後 美紀とも連絡を取りはじめた。

何日目かのLINEのやり取りの最中に電話が鳴った。

どうしてもLINEじゃイヤだったからって。

ちゃんと聞いてほしいからって。

京介さんのことだとは思ったけど


記憶が戻ったからって…… 連絡ほしいって……


送られてきた京介さんの名刺の写メ。


もう 大丈夫だって思ってたのに…

気付いたら涙がポタポタと流れていた。

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