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あなたの色に染められて

第1章 出逢い


『高円寺さーん。カルテの入力終わった?』

『はい!終わりました。』

入職時 新たな一歩を踏み出す私をお祝いしてくれた満開の桜もすっかりと緑眩しい葉をなびかせる5月のはじめ

この春 大学を卒業した私は地元の総合病院で医療事務の仕事についた。


高円寺 璃子 22歳

やっと社会人の仲間入りしました。


『じゃあ この書類に院長のハンコをもらってその足で3階のナースステーションまでお願いできる?』

『はい。いってきます。』

自分の希望する職種ではなかったけれど 医療事務なら今後 結婚しても続けられるかな…なんて軽い気持ちで決めたこの仕事。

『院長室…院長室…』

でも 実際は覚えなければならない医療用語に四苦八苦して 事務所のお姉さまたちの雑用をして

コンコン…

『失礼します。書類にハンコお願い出来ますか?。』

働くってことはこんなにも大変なんだ…。なんてしみじみ思ってる今日この頃。

『璃子!』

3階のクラークさんに書類を渡すと この病院で唯一ホットできる声が私の名前を呼んだ。

『美紀!お疲れさま。』

この元気のいい声の主は私の高校時代の親友でナースの美紀。

事務所と病棟ということで院内ではなかなか会えないけど 会えば自然に話も弾んで

『ねぇ。アンタ今日暇?仕事終わってから会えない?』

『別にいいよ、どうせ暇ですから。』

美紀とならんで廊下を歩くと階段の前で

『ちょっとさ付き合ってほしいのよ。』

『いいけど…どこに?』

美紀はニコッと笑うと私の肩をポンポンと叩いて

『いいからいいから。じゃあ、18時に駐車場で待ってて!私 車出すから。』

『OK!って、ちょっと!』

ナースは忙しい。手を振ると廊下の角をさっと曲がっていて 早速患者さんの車イスを押して

『もう…』

嵐のように現れて嵐のように消えていく。

…なんだなんだ?と首をかしげる私

でも 最近遊びにも行かず病院と自宅を行ったり来たりの毎日。

それならそうと、早めに仕事を終わらせちゃいますか。

小走りに階段を降りてパソコンに向かい残りのデータ入力を始めた。

このとき私は知りもしなかった。

この誘いが私の運命を大きく変えることになるなんて

ずっと臆病だった私が花を咲かせ

誰かの色に染まるなんて

『よし!』

そう 私の運命の日は今日でした。

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