あなたの色に染められて
第23章 significant other
『遅いよ~!』
『悪ぃな。』
生ビールを注文しながら 俺の横の席にドカッと座り ネクタイを緩める仕草さえ画になる京介さん。
『相変わらず忙しそうだな お前は。』
『年末だしな。それに直也みたいに17時にスパッと帰れるお役所仕事じゃねぇから。』
相変わらずなこのメンバー。珍しく平日の仕事帰りに待ち合わせ。
『で 直也 。どうよ。』
改めて乾杯した後 長谷川さんが早速切り出した。
俺は得意気にみんなの顔を見回して ニヤッと笑った。
『おぉ~』
…でもね。これが訳ありなんだ
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美紀ん家のカレンダーが新年を前に新しくなった。おまけ的についている12月をめくると 1月の三連休の初日に“結婚式”の文字を見つけた。
キッチンで二人並んで 洗い物をしているときに俺は話の合間を見て勝負をかけた。
「で 結婚式の行きは美紀だけ乗っけて 帰り は璃子ちゃんをどこのホテルまで送ればいいの?」
すげぇ ドキドキした。返事までの時間がとにかく長く感じて もしかしたら声は震えていたかもしんない。
…神様。仏様。キリスト様。
「うんと。式をあげるホテル。そのまま泊まるんだって。」
やればできる!やればできたじゃないか!俺はどれだけ自分を誉めただろう。
「先生と一緒の部屋だから。」
…えっ?
俺の顔を覗きこみニッコリと笑って
「先生も一緒に日本に帰ってくるんだって」
コイツは俺よりも1枚も2枚も上手で
「マジかよ…」
京介さんが近寄る隙はどのぐらいあるのか…
「…流石の京介さんでもねぇ…」
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「って いう感じで……。」
はぁ……
みんなの溜め息で空気が重くなりかけたとき
『それで 充分だろ… 』
椅子に凭れて腕を組み口角をあげて俺を見据え
『…俺は別にその人居たってかまわないけど。』
ひとつ大きく溜め息をついた長谷川さんはジョッキ越しに京介さんジロリと睨み
『…京介。調子に乗るな。…最後のチャンスかもしれないんだぞ。』
わかってる…と言わんばかりの少し尖らせた唇。
この人の自信はどこから来るのだろう。名前をただ呼びあっただけなのに…
でも俺たちもそんな京介さんを見てると なんの根拠もないのに もう一度うまくいくんじゃないかって
何者なんだろ…森田京介って男は…