あなたの色に染められて
第23章 significant other
『わぁ。すごーい!』
『どう?気に入った?』
日本で言う忘年会に参加して二人揃って帰宅した夜
リビングのドアを開けるとそこには私の背丈よりも高いクリスマスツリーが暗闇のなかで光輝いていた。
『たっちゃん。…すごい。』
振り向くと彼は満足そうに微笑み 後ろからギュッと体を包み込んでくれた。
『…だろ』
キラキラ揺れる星に艶のあるリンゴ 白地に赤いリボンが巻かれたステッキ。 そのどれもが光に照らされて闇に輝いていた。
『これ本物?』
『そうだよ。せっかくこっちに来てるから 用意してもらった。』
大きな鉢からまっすぐに生える太い幹。そこからたくさんの枝が別れて不揃いな葉が散らばる。
その合間を縫うように交互に点滅を繰り返す光の欠片。
『ありがとう。たっちゃん…。』
指を絡められ 頬を寄せあい同じ光を眺める。
京介さんにもらったキャンドルの何倍の大きさなんだろう。
二人の掌で包み込めるほどの小さなツリー。
私は あの電話からこうやって京介さんを思い出すことが増えていた。
電話が鳴る度 …ううん。暇さえあれば着信をチェックしてる始末。
朝起きて 仕事の合間 家事をしているとき こうやって彼の腕にに包まれているときも私の心の中には京介さんの声がこだまする。
「……璃子………り~こ。」
名前を何度も呼ばれ 伝えたかった言葉…
愛してる…の意味。
……京介さんのところにはもう戻れないのに。
『来年は璃子が飾り付けしてね。』
『……うん。』
来年も再来年もその先も…たっちゃんと歩んでいくと自分で決めたのに…
決めたのは私自身なのに…
『…黙っちゃうほど気に入っちゃった?』
彼の方へと向きなおし胸に頬を埋める。
『…うん。ありがと。』
『…俺のこと ちゃんと見て…』
顔を上げ視線を向ける。 私の瞳の奥には誰が映ってる?
『…俺のここを見て…』
右手を掴み彼の左胸に添えられる。
『……。』
胸に添えられた自分の右手に視線を落とすとたっちゃんの手が私の手を包み込み
『……俺のここは璃子でいっぱいだから。…忘れないで。』
『……うん。』
きっと 見透かされてる。揺れる心。戸惑う心。
掬うように唇を奪われ彼に侵食されていく。
『……離さないから。……離れられなくしてやるから…』