テキストサイズ

あなたの色に染められて

第23章  significant other




『…仕事は最初の約束通り たっちゃんが日本に戻るまでは…やらせてください。』

たっちゃんのドクターとしての姿勢は素晴らしい。その彼をサポートするのは最初に決めたこと。

きちんと丁寧に仕事をするたっちゃんにこれ以上迷惑はかけられない。

『それは助かるけど…。お前キツくないか?』

『…仕事は仕事ですから。そこはちゃんとやらせてください。』

『辞めてもいいんだぜ。…もう俺に用はないんだろ。』

ずっと薄ら笑いを浮かべて 私を見てる彼。出会った頃の鋭い視線。

『やります…やらせてください。…先生。』

彼に向かい頭を下げた。

この一週間考えたこと。

それは闇の中から私を救いだし 大事にしてくれたたっちゃんにきちんと誠意を見せること。

先生にはこっちでもっと色々なことを吸収して日本に帰ってもらいたい。

そして日本に戻りたくさんの命を救ってほしい。


『……バカだな。お前は。』

俯いて少し微笑んで 私を見上げると やっぱりたっちゃんは優しかった。

『…残ってくれるのは本当に助かるけど…それなら…条件がある。』

『……条件…』

『俺とあのまま一緒に住むこと。』

『…え』

『こっちは危ないだろ。…それに ご両親にも俺は頭を下げられてるんだ。…それは曲げられない。』

『…たっちゃん。』

『安心しろ。もう手なんか出さねぇよ。…メイドを雇うから家事もしなくていい。その分お前も生きた英語をしっかりと身に付けろ。』

『…たっちゃ…』


たっちゃんは私の前に立ち あの優しいいつもの微笑みで 私の涙を拭ってくれた。

『…最後に …俺にクリスマスプレゼントちょうだい。』

そう呟くと たっちゃんは私を包み込んだ。

私は彼の胸に両手を添えて

『帰りたくなったらいつでも日本に帰っていいから。』

『……。』

『…璃子。お前は我慢しすぎ。自分のために生きろ』

『……うん。』

『…その笑顔…忘れるなよ。』

『…うん。』

『飯も…スゴくうまかったよ。ごちそうさん。』

『…また作るよ…』

そして ギュッと腕に力を込められて

『お前ほど愛しい女はいなかった…最高の女だったよ。』

たっちゃんは私の額にキスを落とした。

きっと京介さんに出会う前にたっちゃんに出会っていたら間違いなく私は彼を愛していた。

彼のこのムスクの香りを胸にしまって

ストーリーメニュー

TOPTOPへ