あなたの色に染められて
第25章 Reunion
……ガチャン
キャッチボールの音だけが響く夜
思ったよりも大きな音をたてて開くドア。
俺がグラウンドに一歩踏み入れると 3人が一斉にこっちを向いた。
俺はそのまま横に一歩ずれてフェンスに凭れかかるとそこに現れたのは
京介さんが会いたくて会いたくてたまらなかった愛しい人。
長谷川さんと佑樹さんはハイタッチをして璃子ちゃんの登場を喜ぶ。
京介さんは天を仰ぎ 大きく息を吐くと 俯いてもう一度小さく息を吐き俺たちの方へ歩き出した。
途中 グローブを佑樹さんに投げ 璃子ちゃんだけをまっすぐに見て微笑んで
*******
マウンドから入り口までがこんなに長いなんて知らなかった。
今日 急に呼び出された理由
コントロールのいい佑樹が暴投した理由
長谷川さんがいつもよりお喋りな理由
…バカじゃねぇの
…俺だけ知らなかったっていう
…どんだけお節介なんだっつうの
歩きながらグローブを外して ヘラヘラした佑樹に投げる。
『…バーカ』
璃子がここに気た理由とこいつらの笑顔はきっと比例してるはず。
彼氏がいたってかまわない。だって俺に会いに来てくれたんだろ。
それが答えだろって
いまだに顔を上げない璃子の正面に立ち 堪らなく愛しい人に手を伸ばす
*******
俯いてる私の目線にスパイクが映り込んだのと同じタイミングだったと思う。
私の体をふわっと包み込むぬくもり
『……璃子。』
愛しい人が耳元でそっと私の名を囁く。
それは紛れもなく京介さんの声。
どうして私はずっと会いたくないと言い続けたのか…
それはきっと…こうやって涙が止まらなくなるから。
京介さんは私の後頭部を抱えてギュッと強く抱きしめてくれた。
言葉なんていらなかった
ただ京介さんを体で感じてぬくもりを確かめる。たったそれだけでよかった。
最後にこの胸に抱かれたのは一年前。彼が記憶を無くしてしまう前。
一年前と同じ 私の知ってる彼の香り。
私の心を奪い 忘れることのできなかったぬくもり。
『……京介さ…』
二度と呼ぶことのできないと思っていた愛しい人の名前。
『……京介さん…』
もう一度彼の名を口にしたのと同時に 震える手を背中に回し ギュッと力を込めた。