あなたの色に染められて
第25章 Reunion
『ほら。もう迎えに来てるわよ。』
カチャ
『ごめんなさいね…待たせちゃって。』
『…お久しぶりです…色々とご迷惑おかけしました。』
『…もう一度 逢えると思ってたわ。…それより体はもう?』
『ありがとうございます。』
先に玄関を出ていたママが京介さんに頭を下げられていた。
『ほら。遅刻しちゃうよ!京介くんよろしくね!』
『いってきま~す!』
彼に再会して帰宅したあの日 私の真っ赤な目を見たママは抱きしめてくれた。
「…逢えたのね。…よかったね」
すべてを見透かしたようにそう言って。
コーヒーを淹れてくれたママと夜中まで色々と話した。
ママは私の一番の理解者で記憶喪失で悩んだときも アメリカに旅立つときもすべて受け止めてくれた。
来週には離れてしまう私たち。まだきちんと話もしてはいない。
今日 結婚式で残りあと5日。ママが意外な提案をしてくれた。
「アメリカに発つ日は家から出発してもらいたいけど…。残りの日々は京介さんと過ごしてみたら?」
「……。」
ママは私の胸元に輝くハートを指でチョンとつつきながら
「…これはママの意見じゃなくて…女としてね。」
ママはそう言って優しく微笑んだ。私はいつか肩を並べることができるのだろうか。
「…ありがとう…ママ。」
結婚式までの残りの2日は家族3人で外食をしたり のんびりテレビを見たり…相談にのってもらったり。
その都度ママは私の話に耳を傾けてくれた。
「…幸せならいいじゃない。…女は愛されてナンボよ」
京介さんと付き合い始めた頃にママから言われた言葉を思い出した。
“…璃子が幸せになれる道を自分で探すのよ……璃子が選んだ道をパパとママはちゃんと見守るから…”
そして私は今日4日分の大きな荷物を車に積んで会場まで送ってもらう。
『なんか忘れてんだろ。』
そう言って左手をスッと私の方に差し出すと私はその掌に私の小さな手を重ねる。
『…ネックレス…捨ててなかったんだ。』
『…うん。捨てられなかった。』
たっちゃんと別れた日から私の胸元に輝くピンクのハート。
このドレスにきっと似合ってるはず。
『俺ってやっぱりセンスいいな。』
『…うふふ。そうですね』
気持ちひとつでもう一度彼の胸に飛び込んだ。
後先なんてなにも考えてなかった。