あなたの色に染められて
第25章 Reunion
『…先生と…別れたの…』
『…そか。…じゃあ 家に送るよ。』
『…すいません。』
震える声でそう告げた璃子はそれ以上口にしなかった。
ただ 窓に映る景色を眺め涙を流す璃子にそれ以上のことを俺は聞けなかった。
俺たちが離れている間 色んな事があったと思う。
“わがまま言って 大事にしてもらってる”
たしか美紀ちゃんがそう言ってた。俺の前でわがままなんか言ったことなかったのにな。
俺は年上のくせにいつも璃子に甘えて…野球ばっかで…挙げ句の果てに璃子の記憶だけを飛ばして苦しめて…
『…はい到着。』
『…ありがとうござ……キャッ!』
繋いだ手を引っ張り抱き寄せた。
『…逢いに来てくれてありがとな。』
『…ううん。』
抱きしめた瞬間 穏やかな時間が流れ始める。
微笑みながら顔を上げた璃子の首筋に手を回し額を合わせる。
『…やっと 顔見せたな。』
『…あんまり見ないで下さい。もうボロボロ。』
『そんなこと どうでもいいんだよ。』
『……ん…』
1年ぶりに重ねた唇はあたたかくて 柔らかくて いつまでも絡ませていたいほど 俺を虜にした。
『…ん…苦し…』
『…まだ…』
でも コイツは本当に苦しそうに俺の胸を叩くから仕方なく唇を離す。
『……もう…ハァハァ。』
顔を真っ赤にして俺を睨む顔がまた俺の理性を飛ばすから
『…もう一回…』
『……ん…』
また 甘い果実を頬張る。これからはいつでも食えるのに。
目を潤ませる璃子に俺はあの時のように問いただす。
『…璃子は誰のだっけ?』
『……。』
璃子はただ微笑むだけで…
『…なぁ。俺のだよな…』
微笑んだ瞳からまた涙が零れた。
俺たちが離れていた間にあったこと。
『なぁ……璃子。』
向こうでアイツと生活していたこと。
『…璃子。』
そいつにすげぇ愛されてたこと。
璃子は唇を震わせて微笑むだけで
俺は何も知らない…知りたくもなかった。
でも 時間はちゃんと進んでて…
…一年前の俺たちとは違うサイクルで刻んでいて
『…来週には向こうに帰るの。』
やっと聞き取れるぐらいの小さな声だった。
『…え』
『…ごめんなさい。』
でも俺たちの心は確かに繋がってる。
だってお前は
『…どこにいても俺のモノだろ。』
もう一度俺の胸に包み込んだ。