あなたの色に染められて
第27章 お気に入りの場所
『あー!りこちゃんだぁー!!』
『ケンタくんっ!』
笑顔で走ってくる俺の最大のライバル…ケンタ。
やっぱり 策士だな…
手を広げて迎える璃子の胸を目掛けてダイブする。
『大きくなったねぇ。』
『おれねぇ こんど1年生なんだよ』
*****
ことを終えて遅い朝メシ食ってるときに 鳴り響く電話に出てみれば 「早く来い!」と長谷川さんからの指令。
俺はため息をついて璃子にお伺いをたてると 胸の前でパチンと手を合わせて目を輝かせて
「行きたい!…えっ?…行っていいの?」
「って言うか…来いって…」
みんなの目を気にして 諦めてたと璃子は言うけど
「… 夜のミーティングにも奥さま軍団が駆けつけるって言うか…らしくて…」
うんうんと首を縦に振りはしゃぐコイツは
「ケンタくんは?」
「…来ますけど…」
俺の気遣いもわかっちゃくれない野球バカな彼氏のオンナだった。
*****
『お~!璃子ちゃんじゃーん!』
『おかえり~』
『また バカ京介選んだのぉ?』
璃子がベンチに入ると仲間が集まり出した。
再会を喜ぶ璃子は目を潤ませて俺の顔をチラリと見る。
璃子の一番来たかった場所はココだったんだって
俺がグラウンドに駆け出すと ケンタと手を繋いでスタンドに上がっていった。
『…悪かったな。』
ポンと肩を叩くのは長谷川さんで
『いや。あんな顔見せられたら連れて来ないわけにはいかないでしょ。』
『ケンタも大喜びだよ。あの様子じゃ 今日1日あの手離さねぇぞ』
『いいですよ…ケンタなら。』
『いいのかぁ?ケンタはなかなかのやり手だぞ』
あと3日。
その甘い日々が過ぎれば またヤツの元に戻る璃子
『何をビビってんだよ』
長谷川さんはド真ん中を突いてくる。
『…手放すのが怖いんですよ。…ぶっちゃけ…俺みたいなのより先生と一緒になった方がいいんじゃないかって。』
『…一般論だな。金もあるし地位も名誉もか…』
『……。』
なんの取り柄もない会社員が 人の生命を預かる医者に勝てるわけがない。
おまけにあの医者はイケメンで俺なんかよりよっぽど大人だし…
『心配すんな。璃子ちゃんは何があってもおまえを選ぶよ』
『…は?』
『ほら見てみ』
長谷川さんが指差すその先に 笑顔で俺に手を振る璃子がいた。