あなたの色に染められて
第27章 お気に入りの場所
『水滴がまだ残ってますよ』
『…ハイハイ…』
たまには手伝わせて と腕捲りをして私の横で洗い終わった食器を拭きはじめた。
キッチンは男子禁制!なんて思っていたけど 時計を見れば残りわずかな時間。少しでも彼に寄り添っていたかった。
『…なぁ…璃子…』
『…ん?…』
京介さんの顔を見上げると 膝を屈めて唇を少し突き出して
『…はやく…』
『…もう…』
私は背伸びをして
…チュッ…
彼を感じた。
洗い終えると拭いてくれた食器を棚に片付けていく
その時 ふと 京介さんの広い背中に目が止まった。
私は吸い寄せられるように彼の背中に額を添えてぬくもりを感じた
『…京介…』
京介さんの香りがする広い背中。私が毎晩爪を立てた背中。
『…どうした?…』
食器を拭き終えた彼がクルリと振り向いて 私を胸の中に包み込んでくれた。
『…もう…寂しくなっちゃったの?』
髪を撫でながら額にキスを落とすと 璃子は俺の背中に腕を廻して コクりと頷いた。
『…もう逢えなくなるわけじゃないんだから…』
『……。』
肩を震わせて俯く璃子をギュッと抱きしめた
『…電話もするし…メールもする…』
これは俺の精一杯の強がり。
『…戻りたくないよ…』
『…。』
『…京介のそばにいたい…』
いつもはこんなこと言う子じゃないのに
今 俺の胸の中にいるコイツはまるで駄々をこねる子供のようで
抱きしめていないと崩れてしまいそうで
俺だってもう璃子と離れたくない。このまま胸の中に閉じ込めておきたい
『…いいの?それで?…』
でも 責任感が強いコイツがこっちに残ったらきっと後悔する。
それに
『…好きな英語をちゃんと勉強してこい…』
俺には叶えてやれない夢。
『…俺はここで待ってるから…』
『…京介…』
『…ずっと…待ってるから…』
お前が帰ってくるなら俺はいくらでも待つよ。
璃子は涙でグショグショになった顔を上げて
『…ホントに?…』
『…俺…嘘ついたことあったっけ?』
そう言うと璃子は俺のYシャツのボタンを2つ外して 俺の胸に唇を寄せた。
ちょうどリングの下あたり
璃子は俺に精一杯の痕を残した。
『…私のだから…』
そうだよ。
『…お前も俺のモノだから…』
ギュッと抱きしめて 愛しい唇を奪った。