あなたの色に染められて
第4章 彼の背中
『ゴメンゴメン!今日は患者さん途切れなくて会計が終わらなくて。』
昼休みを少し過ぎた時間、遅番の美紀と食堂で待ち合わせ先日のデートの報告会を開いた。
美紀は窓際の席に座り本日の日替わり定食を食べ始めていた。
『相変わらず弁当持参なんだ。』
『うん、このぐらいはしないとね。』
私は自宅から持ってきたお弁当をゆっくりと広げ 水筒のお茶を一口飲んだ。
『今度私の分も作ってきてよ。』
『いいけど、大盛りで作るようだよね。』
美紀はナースは体力勝負!といつもご飯は大盛りを注文する。
『いいよ普通のサイズで。』
こんなに食べてるのにこの体型なんだから ナースって大変なんだと毎回思わされる。
『で!どうだったのよ。二人でご飯。』
『うん、かなり助けてもらったけど…ちゃんと……伝えられました。』
美紀は一瞬ご飯を喉に詰まらせそうになりながら
『う~~んっ!ゴホッゴホッ、言えたの?…好きですって?』
ストレートな物言いに私は恥ずかしくなり小さくコクリと頷くことしかできないけど
『よく頑張ったじゃなーい!』
美紀は涙を浮かべなが身を乗りだし
『ちょっと美紀!』
私の髪の毛をくしゃくしゃに撫で回し
『えらい!えらい!!ホントによく頑張ったねぇ!』
誉めてくれてるのかぐちゃぐちゃにしようとしてるのか
『もう!ぐしゃぐしゃじゃーん!!』
口を尖らせ睨み付けながらも美紀が喜んでくれることが何よりもうれしかった。
『で、どういうシチュよ。時間ナイんだからチャッチャと聞かせてよ。』
お姉さまたちに聞こえないようにこっそりと私は話始めると
『ウソっ!キスまでしちゃったの?』
『ちょっと声が大きいよ!』
私は必死に声のトーンを落とすけど
『どうだった?はじめてのキスは?』
美紀はそんなのお構いなしに矢継ぎ早に質問してくる。
『どうって…』
そんな私はその時の光景を思いだし真っ赤になりながら
『…やさしかった…かな。』
そう、今でも残ってるあの冷たい感触。まるで唇で会話してるようだったんだ。
待ってたよ。好きだよ。って…
『何ニヤニヤしてんのよ。でもやっと見れた。そんな蕩けちゃいそうな恋してる顔。』
美紀は頬杖をついて優しく微笑んでいた。
『良かったね。』
『うん…』
『大事にするんだよ。』
私は大きく頷いた。