あなたの色に染められて
第4章 彼の背中
週末、早朝から白球を追いかける彼のもとへと電車に揺られて球場へと向かった。
『直也さんこれどうぞ。』
『サンキュ。』
最近は応援の傍らで チームのお手伝いもするようになり
『マネージャーさんみたいだね。』
ジャグに麦茶を作ったりおしぼりを作ったりと楽しく参加させてもらっていた。
『あちー!璃子ちゃん、俺にもちょうだい!』
『はい。みなさんどうぞー。』
休憩をしにベンチに戻ってきた人たちに麦茶やおしぼりを渡していく。
なんだか本物のマネージャーなったみたい。
少し離れた水場でみんなのコップを洗いながらちょっと青春しちゃってる私。
『璃~子ちゃん!手伝おうか?』
この声は…やっぱり…
顔をあげるとそこには佑樹さんが立っていた。
『だ、大丈夫ですよ。私一人で出来ますから。』
コップに視線を戻し逃げ出したい気持ちを押さえていると
『キャッ!』
すると突然、佑樹さんが背後から私の腰を引き付けるように抱き付いてきた。
『やっ!…やめ…てください。』
振りほどこうと泡だらけな手のまま 腰に回された手を剥がそうとするけど
『璃子ちゃん。』
耳元で囁かれながらどんどんキツく抱きしめられる。
『いいじゃんこのぐらい。』
顔をブンブンと横にふり
イヤ!……おねがい、誰か助けて!
声にならない声をあげる。
すると
『おまえ!なにやってだよ!』
あっという間に佑樹さんは誰かに腕を捕まれて投げ飛ばされる。
それと同時に私の手首は引っ張られて息を切らした胸に引き寄せられた。
…京介さん。
片手でしっかりと私を抱き止めて倒された佑樹さんを睨む。
『なんだよ。せっかく良いところだったのに。お試し期間中なんだからいいだろ?』
佑樹さんはクスッと笑いながら私たちを見上げた。
その言葉に京介さんはハッキリと
『…もう俺のだから。気安く触らないでくれる?』
体がガクガクと震えている私をさらに引き寄せて言ってくれた。
『何だよ。それなら早く言えよ。』
佑樹さんは笑いながらゆっくりと立ち上がると私を見て淋しそうに小さく笑って いつものように手をヒラヒラ振りながらグラウンドに戻っていった。
『もう大丈夫。』
『…。』
京介さんの腕のなかで私はまだ体を震えさせていた。