あなたの色に染められて
第28章 離れていても
『…ヤバイ…』
それは決してヤバくはない話で
ひとり嬉しさを噛み締める男に 俺たちも一緒になってニヤケ面しながら
『…もしかして…』
『…もしかしちゃう?…』
顔を見合わせて
『…もしかしました…』
なんて 京介さんも俺たちに乗っかって
『ちょっと美紀ー!』
俺は美紀をテーブルに呼びつけ 京介さんを横目で見ながら耳打ちする。
…もしかしたらしいぞ…
『…ウソ!』
京介さんの顔見れば解るよな。
『別の先生がキャンセルになったから 璃子の先生が急遽代打だって』
目を細めて首なんか少し傾げちゃって
『…また遊んでやってよ…』
『…もちろん…』
一気にみんなの顔が華やいだ。
この時期に帰ってこれるなんて思ってもいなかったはず。
『どのぐらい滞在できるって?』
幸乃さんにも魔女たちにも会わせたい長谷川さんは早速日程の確認
『…まだハッキリしてないみたいだけど…一週間ぐらい』
一週間って言っても前後2日は移動日。学会にも出るし 家族とも過ごすだろうから 二人の時間はそんなに長くは取れないか…
『…厳しいな…』
佑樹さんも頭で何となく計算したんだと思う。
でも その短い日数の中に二人にとっての大切な日があって…
『…とびきりの誕生日プレゼントですね』
美紀は京介さんの顔を覗き込みながら茶化したりなんかして
『璃子ちゃんがプレゼントだなんて…』
『なんか…エッチだよな。』
耳までほんのり赤く染まってる京介さんなんて滅多に見れないぜ
『…おまえら…』
俺たちは顔を会わせて笑った。
『…ここには連れて来ねぇから…』
そんなこと言っちゃって 一番みんなに見せびらかしたいくせに
璃子ちゃんがたった一週間帰ってくるだけで こんなにも俺たちは浮き足立つ
『私にも会わせてください』
でも そんな空気をピシャリと断ち切るのは 笑顔なのに目は全く笑っていない狼ちゃんで
『そうだな。萌にも紹介するよ。』
サラッとそう言われてしまえば どれだけ惚れているのか伝わるはずなのに
『…楽しみにしてますから…』
更に上を行く笑顔で返す一匹狼萌ちゃんは まだ見ぬ璃子ちゃんに戦いを挑んでるかのようだった。