
あなたの色に染められて
第28章 離れていても
『聞いてどうすんだよ』
ほらね…やっぱり面倒臭い子じゃん。
『だって 遠距離でもいいって思える人なんですよね』
京介さんの瞳をじっと見つめる萌ちゃん
『…私は遠距離なんて無理ですから…』
この子は随分とハッキリとモノを言う子なんだって思った。
…今までもこうやって生きてきたのかな…
女子のグループでこの性格だと大変だっただろう なんて余計な心配までしてしまう。
『彼氏を寂しがらせるなんて私には考えられません。どんな事情でも近くで彼を支えるのが彼女の役目だと思うんですけど。』
『…俺が行かせたんだよ…』
そう ポツリと呟くと 京介さんは壁に凭れ掛かりながら 萌ちゃんに優しく微笑んだ。
『…え…』
『…行きたくないって泣くアイツを…俺が行かせたの…』
『…どうして…』
長谷川さんも佑樹さんもニヤニヤしながら京介さんの話を聞いていた。
それは京介さんには珍しいノロケ話だったから。
『…そりゃ…萌が言う通り 側にいたいよ…でも…心が繋がってるならどこでもいいんだよ』
でたよ。半端ない破壊力。
『そんな不確かなものだけで先輩の心を繋ぎ止めてる彼女ってそんなに綺麗な人なんですか?』
『…綺麗っていうか…可愛いな…』
『…なにそれ…』
こりゃ璃子ちゃんへの最高の誉め言葉だな。さすがの萌ちゃんも返す言葉がないか
♪~♪~
『…もしもし…おはよ…どうした…こんな早くに…』
この顔見れば相手が誰だかなんてすぐにわかる。
『…え?…なに?…もう一回言って…』
それも 席を立たないで萌ちゃんのいるこの場で喋るなんて…
『…え?…ゴールデンウィーク?…29日は相談会だけど…あとはカレンダー通りの休みだと思うけど…』
久しぶりだった。優しい声して話す京介さんを見るのは
この顔 この声 それは璃子ちゃん専用で
俺たちは璃子ちゃんの声が漏れるのを期待するように耳を傾けていた。
『…マジ?…』
そう言うと 俯き片手で顔を被い ニヤケた顔を隠した。
『…詳しく決まったらまたすぐに…うん…そうして…』
ふと萌ちゃんの顔を見るとさっきまでの威勢の良さは影を潜め 今にも泣きそうに眉をハの字に曲げて
『…どうして…』
ポツリと呟いた。
