あなたの色に染められて
第29章 HAPPY BIRTHDAY!
『あとどのぐらい?』
『2時間ぐらい前に東京駅に着いたって』
今年のゴールデンウィークは日の並びがいい。
1日の土曜日から5日の水曜日まで俺たち役所関係も奇跡の5連休
璃子ちゃんは4月のゴールデンウィーク前から日本に戻っていた。
けれども はじめの何日かは京介さんも仕事が忙しいからと 璃子ちゃんは家族とゆっくりと過ごし
そのあとの3日間は学会が行われる京都へと旅立った。
そしてやっと今日5月1日。璃子ちゃんは京介さんの元に帰ってくる。
野球の練習を終えた俺たちはいつもの居酒屋でいつものミーティングをしながら 彼女を待っていた。
『迎えにいかねぇの?』
『親父さんが送ってきてくれるって。』
だからか…さっきからチラチラとスマホの画面を覗いていたのは
もうすぐこの場所にあの笑顔が帰ってくる。それは俺たちも待ち望んでいたことで
でも そんな俺たちと違う心境で待っている子がひとりいるわけで…
『…あのぉ…席どうするんですか?…』
萌ちゃんは一応?気を使い京介さんの隣の端のお誕生日席に座って
『あぁ…気にしないでいいから…』
京介さんはスマホを握りしめながらクスリと微笑んだ。
璃子ちゃんを紹介してもらえると 練習試合の最中からソワソワしてた萌ちゃん。
今日はなんだか対抗意識バンバンで いつもよりおしゃれしてヒラヒラのミニスカートなんか穿いちゃって
メイクだってなんだかいつもよりハッキリした感じ
『…来ればわかるから…』
長谷川さんも柔らかい笑顔で萌ちゃんにそう伝える。
そう。来ればわかるんだ。
穏やかで優しい顔してそれはそれは幸せ全開な顔で どんだけ璃子ちゃんに惚れてるか って
だって前回は不意打ちで現れた璃子ちゃんを俺たちの前だというのに抱きしめちゃったもんな。
さて今日は…どうすんだろ
なんて考えたときだった。
♪~♪~
京介さんのスマホが鳴り響くと一瞬にして顔が綻んで
『ちょっと出てくるわ』
ポケットにスマホを突っ込みながら慌てて立ち上がり 座敷の襖を開けて外に飛び出した。
『…愛されてるねぇ…璃子ちゃんは…』
『…ほんとだよな…』
『…あいつここに戻ってくんのか?…』
みんなで京介さんが出ていった襖に視線を送る。
あと何分?
俺たちの楽しいゴールデンウィークが始まった。