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あなたの色に染められて

第29章 HAPPY BIRTHDAY!




どのぐらい待ったかな 襖が開くと 京介先輩が大きな荷物を持って入ってきた。

その後ろ 大きな体から可愛らしい笑顔が覗いたと思ったら

『璃子ぉー!!』

私たちの間で “大奥”と密かに呼ばれてる奥さまたちの席が一斉に声をあげると 空けておいた席をバシバシと叩き手招きをする

先輩は彼女の頭にトンと手を置いて目を合わせ ニコリと微笑みあうと 彼女に背を向けて私たちのテーブルに戻ってきた。

…うそ…

顔を緩ませながらさっきまで座っていた私の隣にドカッと座って

『…な。要らないだろ…』

そう言って私に優しく微笑んだ。

なんだか その顔は少し照れていて

…あっ…

さっきとは違う 女性らしい甘い香りが私の鼻を擽って

…そっか…

スマホを片手にこの席を立ったのは10分以上前。

きっと こうなることは百も承知で ほんの少しの二人の甘い時間を隠れて過ごしてきたのかもしれない。

彼女は一度 こっちのテーブルに会釈しながら笑顔で手を振って

『…相変わらずあっちの席か…』

長谷川先輩は手を振り返しながらポツリと呟き

『…魔女たちのお気に入りだから…』

『…そうそう…』

佑樹先輩も直也先輩もそんなこと言って優しく微笑んで手を振り返した

けれども 彼女が今いる場所は泣く子も黙るあの大奥な訳で

『…あの席に…ずっといるんですか?…』

『そう。魔女たちが離さねぇの』

…信じられない…あの席に呼ばれ平気で座れるなんて…

それに 長谷川先輩の息子さんを膝に乗っけて頬を擦り寄せちゃって

敷居が高いっていうか怖いっていうか…女ならではの上下関係がバッチリある大奥。

『…彼女さん…スゴいですね…』

『…だろ…当分こっちに来ねぇから…』

先輩は彼女に優しい視線を送りながら微笑んでいた。

『…あっ!…ケンタのヤツ…』

ケンタくんが彼女の頬にチュッっと音が聞こえてきそうなキスをすると

『…ちょっと…長谷川さん!ケンタもう一年生だろ…』

…なんて 今まで見たことのない先輩を見せつけられた。


『…なっ…違うって言ったろ…』

『…。』

『…璃子ちゃん限定なの…』

直也先輩は私の肩をポンポンと叩いて 私に微笑んだ。

羨ましかった。

たまに帰ってくるだけで先輩からあんなに素敵な笑顔を向けてもらえるなんて

…いいな…

ただ羨ましかった

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