あなたの色に染められて
第4章 彼の背中
『こんな店でよかったの?』
『はい!私こういうお店来てみたかったんです。』
連れてきてもらったのは 壁に手書きのメニューがずらっと並んだ 彼の行きつけの定食屋さん。
Tシャツにデニム姿の私が似合う場所
『夏樹さんの店とはだいぶ雰囲気違うけどな。』
『そうですね。でも私好きですよ。こういう雰囲気。女子だけだとなかなか入れないお店ですから。…それにしてもたくさんありすぎて困ってしまいますね。』
目線をあげながらたくさんあるメニューにまだ頭を悩ませていると
『俺はいつも鯖の味噌煮しようかなと思いながら しょうが焼き頼んじゃうんだよなぁ。』
『うんうん。なんかわかる気がします。…じゃあ、 この間みたいにシェアしますか?』
雰囲気は違うけど二人で仲良く
『いいねぇ。じゃあ……お言葉に甘えて、すいませーん!』
今日は私が取り分ける。
『はいどうぞ。』
『サンキュ。』
鯖の味噌煮は大きい方を彼に。彼のしょうが焼きは一口分けてもらって。
『ご飯も少しもらってくれます?』
私のご飯も少し分けて
『いただきます…うん!おいしい。両方食べれるなんて幸せですね。』
『だな。ある意味すげぇ贅沢。』
京介さんは気持ちいいぐらいの食べっぷりでお大盛りを注文したご飯ももうすぐなくなりそう。
『俺ほとんど外食なんだ。昼も夜も。コンビニの弁当も飽きちゃうし。こういう定食屋の方が助かるんだよ。温かいご飯に味噌汁っていうね。』
んっ?もしかして…
『言ってなかったっけ?一人暮らししてんの。2年前ぐらいになるかな。』
『そうなんですか。一人暮らし…お洗濯もお掃除も一人でやってるんですか?』
彼はあっという間に最後の一口を食べきり
『やってるよ。洗濯なんかYシャツがなくなりそうになってあわててする感じだけどな。』
『一人暮らしとかって大変ですもんね。』
お洗濯かぁ。普通、彼女ならお手伝いに行くものだよねぇ。
彼のお部屋を掃除してご飯作ってあげて…なんて。
『またニヤニヤして…ほら。早く食わねぇと置いてくぞ。』
『あ、それは…』
お味噌汁を飲み干し満面の笑みでパチンっと手を重ね合わせ
『ごちそうさまでした!』
Tシャツにパーカーも悪くない。
この格好だから連れてきてくれた彼の馴染みのお店。
『ここは払います!』
『うるせぇっつうの。』