あなたの色に染められて
第4章 彼の背中
『なんで、ちゃんとした洋服来てるんですかぁ?!』
支度を終えた彼が車に戻って荷物を入れる。
『別に普通の格好だろ。』
『普通じゃないですよ。』
だって 私は汚れてもいいようにTシャツに薄いピンクのパーカーを羽織ってデニムのショートパンツを履いていて
『ズルいです。』
彼は 腕を無造作にまくられたシンプルな白いシャツに紺色のタイトなチノパン姿。
『これじゃ、もともと釣り合わないのにもっと釣り合わないじゃないですかぁ!』
口を尖らせてブーブー文句を言う私を京介さんはケラケラと笑ってハンドルを握る。
『ハハッ!そんなことないよ。璃子は何着ても可愛いから大丈夫。』
そんなの全然説得力ないよ。だって京介さんは洗いたての髪がいつもよりサラサラしちゃっていつもにも増して爽やかに見えるのに
…なんだよもぅ
『私なんてスニーカーだし…』
ほっぺをプーッと膨らましてまだご機嫌ナナメな私
そんな私の右手にそっと重ねられた大きな手
『璃子はいーの。俺のなんだから。』
クスッと笑って車を走らせた。
*
『とりあえずメシだな。あー腹へったぁ。なんか食いたいのある?』
朝8時から少年のように走り回ってるんだもんね。
『お腹減ってますよね。京介さんの食べたいのにしましょう?』
『じゃーあー。』
何?今目の色が変わった。
ちょうど信号で止まった交差点、京介さんは繋いだ私の手をギュッと引き寄せて意地悪な視線をおくりながら
『…璃子が食べたい。』
…は…ぃ?
『…へっ?』
固まる私をさらに引き寄せて肩を抱かれ
『どうする?食べてもいい?』
わかってる。からかわれてるんだって。
でも、なんの免疫もない私
体がかぁーっと熱くなりどうしたらいいかわからなくなる。
『だっ…ダメっ!ダメですよ!』
『何で?俺のなのに?』
もう完璧に遊ばれてる。
『…だってその…ダメなものはダメですから!』
『なーんてね。』
『…。』
これじゃ心臓がいくつあっても足りないよ。
余裕の京介さんはまた私の手をギュッと繋いでくれると
『璃子との最初は大切にするって言っただろ?』
コクリと小さく頷いて彼と視線を重ねる。
『今すぐにでも欲しいけど。』
『はい?』
小さな声で聞こえない。
『何ですか?』
『何でもない。』
この先が思いやられるよ。