あなたの色に染められて
第5章 カレー曜日
『あの…何を買いに来たんですか? 』
大きなショッピングモールに何の用?
『璃子のもん。』
お店を探すようにキョロキョロとしながら京介さんは私の手を引く。
『あたしの…ですか?』
そう言ってキッチングッズが並ぶ店内に足を踏み入れると
『俺んち全然皿とかないんだよ。茶碗も俺のひとつだけだし。』
そう言って色々なお皿を手に取り眺めている。
『はい?』
京介さんは私を見て微笑むと
『璃子は明日休みだろ?』
『えぇまぁ…』
『俺もおまえも今日から素敵な三連休だよな?』
なにが言いたいの?
『あの…三連休がどうかしたんですか?』
ニヤッと悪い顔しやがった。
なになに? 私は一生懸命に目で訴える。
『さて、可愛い璃子ちゃんに問題です。今日は何の日でしょうか?』
今日は何の日?えっ?何の日?
明日は祝日だけど今日はなんの日?
『はーい時間切れ~。お仕置き決定~。』
ちょっと待って!さっきよりも悪い顔になってるし!
『お仕置きって…だからなんですか?ちゃんと言ってください!』
京介さんは私の耳元に屈みこむと小さな声で
『璃子が俺の家に泊まってカレー作ってくれる大切な記念日。』
はっ?
時間が止まるってこんな感じ?
もしかしてそれって…お泊りってこと?
聞いてない!聞いてなーい!
『ダメ!ダメです!だって、お着替えも持ってないし…メイク道具も…そう!メイク道具もみんなお家ですから!』
慌てる私を放っておいて お皿に目を戻して知らん顔な彼
『お仕置きってさっき言ったよな。』
逃げ出したい。…お泊まりはもう少し上級者にならないと
無理!無理無理無理ー!
ゆっくりと踵を返してその場から逃げようと一歩踏み出すけど
ガシッ!!
『どこに行くのかな?』
意地悪な目をしたヤツにガッツリ捕まった。
『逃げようかと…』
引き寄せられた耳元で
『一度家に送るから。お泊まりセット用意しておいで。』
『あっ!でも、親に言わないと…』
そうだこの手があった!
でも京介さんはそんなことじゃ怯まない。
『美紀ちゃんから聞いてるよ。3連休は法事でいないって。』
やりやがった!!美紀も共犯だったなんて!
『わかった人?』
『…。』
『わかった人~。』
『…はぃ。』
そう返事をすると彼はごきげんにお皿を選び始めた。