あなたの色に染められて
第5章 カレー曜日
『5分で戻ってこいよ。』
『それは無理ですよ…』
バタンッ
私は鞄の中の鍵を探しながら車の扉を閉める。
『あった!』
玄関と扉の前でやっと見つかった鍵をいつものように開けて
『ただいまー。』
靴も揃えないで自分の部屋のある2階へと走り抜けていく。
化粧品にパジャマ、明日の着替えとベッドの上に放り投げていく。
『あ…下着…』
さて問題です。もしかしたら始めての夜になるかもしれない今夜の下着はどうしたいいのでしょうか。
仕事中の美紀に聞くわけにはいかないし これから買いに行けるわけもない。
『そうだ!この間…』
先週、美紀とお買いもの行ったときに買わされた下着があったはず
『こう言うことだったんだな。』
しつこく下着を買うように進められた理由が今さらわかるなんて
『でも こんな甘い感じのでいいのかぁ。』
白だけどレースがたくさん使われた 私には少し大胆なデザイン
『これしかないもんなぁ。』
ブラとショーツをベッドの上に並べて考える。
『よし!美紀を信じよう。』
一度決心すると女は早い。
あとはエプロンと歯ブラシは途中で買おうかな。
必要最低限のものをバッグに詰め込んで
カチャ
『お待たせしました。』
『待ってねぇよ。』
私は潔く彼の車に乗り込んだ。
*
スーパーのカートを押してくれる京介さんの横を並んで歩く。
『ビールも買ってきます?』
『あぁ、そうだな。』
まるで夫婦のような会話に時折私の頬は赤く染まる。
それを知ってか知らずか京介さんは
『明日の朝飯の分も買った?俺、白飯食いたいんだけど。』
お泊まりが確定だと私に言い聞かせるように明日のことを話始める。
『白いご飯?』
『そう旅館の朝食みてぇなの。ご飯と味噌汁と干物みたいな朝定食。』
『じゃあ、お出汁も買わなきゃダメですね。』
そんなに嬉しそうに笑ってくれるから「帰る」なんてもう言えない。
『あんまり期待しないで下さいよ?』
『期待するって、あぁ、すげぇ楽しみになってきた。』
次々にかごに投入される商品を見ながら これも悪くないと微笑む私
『デザートはとびきりのだからなぁ。』
『はぃ?』
『こっちの話。』
ショッピングバッグをサラリと持ってくれると 私は彼の白いシャツの裾を握った。