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あなたの色に染められて

第36章 mistake

『お疲れ!璃子ちゃん。』

GWの本格始動を前に外国人モニターを集めてはじめての酒蔵見学を行った。

駅まで迎えに来てくれた京介さんの車の中でも 大きな手に包まれていないと震えてしまうほど緊張していた私。

京介さんもサポート役で一緒に回ってくれたけれど台本通りというか…アドリブが聞かないというか…なんとか形になったという感じ。

『いやぁ~。璃子ちゃん良かったよ。なぁ竜介?』

『本当。予行練習にしては上出来上出来。』

『…スミマセン…全然ダメでした。』

『何言ってんだよ。すげぇ格好良かったぞ。』

なんてお義父さんをはじめ みんなからお世辞の言葉を貰っても折れた心はもとには戻らないほどガチガチだった私。

『京介さんが居なかったら私どうなってたか…。』

お国柄なのか 疑問に思ったことはすぐに質問してその都度私は京介さんに助けを求めて。

『聞き取りはなんとかなっても 話すのってやっぱり大変だな。全然単語が出てこねぇの。俺も璃子が居なかったらマジでヤバかったよ。』

働きはじめて1ヶ月。GWに向けて進めてきた この外国人向けの酒造見学と敷地内のお蕎麦屋さんの開店。

お兄さんと京介さんが中心となってそりゃもう毎日残業続きで

『でもさ 少し改善点も見えたしGWまでには修正できそうだな。』

『そうですね。まだまだ頑張らないとですね。』

仕事モードの京介さんは常に前向きで頼もしくて

『あんまり無理すんなよ。本番まではまだ時間あるんだから。』

どんなに忙しくったって こうやって私をフォローしてくれる私の直属の上司。

『ところでさ…今週は来れそう?』

体を屈めて私の耳元で。まだみんな周りに居るのに。

『…うん。』

先週 京介さんは遠方の取引先への挨拶回りで出張していてお泊まりはお休みだから 今週は久しぶりに二人の時間が過ごせる。

『俺さ璃子の飯食いたいんだよ。最近ろくなもん食ってなくて。』

『だからお弁当作るって言ってるじゃないですか。』

『いいの。デザート付きの飯が食いたいだけだから。』

『デザートかぁ…疲れてますもんね。じゃあ 甘いものも用意しておきますね。』

『バーカ。』

私の頭にいつものように大きな手を乗せると 私の耳だけに届くほどの小さな声で

…おまえを喰うの…。

いつだってそう 私の彼は頬を紅く染めさせる天才なのでした。

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