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あなたの色に染められて

第37章 素直にI'm sorry


『まだ 京介は謝ってこないの?』

『そうなんですよ。お義母さん!』

ここに通い出してから 天気のいい午後に母家の縁側でお義母さんとお茶を飲むことが日課になっていた。

『本当バカよねぇ。さっさと謝っちゃえばいいのに。』

仕事とはいえキャバクラに行ったことを謝らない京介さんがどうしても許せない私。

勝手にしろ!なんて最後に捨て台詞を吐いた京介さん。またそれが悔しくて本当に勝手にしてる私はかなりのへそ曲がり。

『仕事中も必要最低限のことしか話してくれないんですよ。もう本当にイヤになっちゃいますよ。』

お互い折れない私たちは仲直りのタイミングさえも見失い始めていた。

『でも 京介らしいわ。小さい頃からどんなに自分が悪くても謝らない手のかかる子だったから。』

『小さい頃からなんですか?』

『そうよ。何か心に思ってることがあってもあんまり口にしない子でね。だから冷静って言うか冷めてるっていうか…。納得できないことがあると絶対に自分からは折れないのよ。』

それは私と出会う前の京介さんのみんなの印象だった。

『ハッキリすぎるぐらいにモノを言うときもあるんだけどね。大事なこととか自分の信念みたいなことっていうのかな。そういうの胸にしっかり持ってる子だったから。』

『…信念ですか…。』

そういえば 京介さんがキャプテンをしていたときの話を聞いたことがあった。

チームのためになることは自分を犠牲にしてでも意見を曲げない一本筋の通った信頼できるキャプテンだったと。

『あの子の肩を持つわけじゃないんだけど きっと何か思ってることがあるのかしらね。』

お義母さんは優しく微笑んで空いている湯呑みにお茶を注ぎながら

『これは私の感だけど 璃子ちゃんをまた哀しませたくないから譲らないんだと思うわ。』

『哀しむ?』

『璃子ちゃんに嘘つきたくないのよ。』

『…ウソ?』

西の空がだんだんと茜色に染まっていく 私が一番京介さんを感じられる時間

『あの子はね…。』

お義母さんの口から紡がれる言葉は 一番大切な人の不器用な優しさそのもので

『ね?京介らしいでしょ?』

『…はい。』

視線を落とすと湯呑みを持つ私の小さな手に輝くお揃いの指輪。

二つを合わせると二人の気持ちと一緒 ハートのデザインが浮かび上がるんだよね。

素直にならなきゃいけないのは私かぁ…

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