あなたの色に染められて
第37章 素直にI'm sorry
…ほらね。
さっきからいつものようにぬくもりを確かめ合うんだけど
『よし。早く下がるように寝るかな。』
ソファからすくっと立ち上がると私の頭にポンと手を置いて
『じゃ おやすみ。』
…ただそれだけ。
何か物足りないというか…寂しいというか…。
いつも髪に頬に額にたくさん落としてくれるのに。
『…おやすみなさい。』
今日はおやすみのキスまでないなんて。
***
『ブぅ~。』
額も頬も合わせるけどキスはナシ。抱きしめてもらえるけどキスはナシ。
バスタブに身を沈めてお湯のなかで唇を尖らせてブーっと息を吐く。
キスしてほしいのに…。
何度かね あ~来るかなぁ…ってタイミングはあったのに見事にスルーされて
…したい!したい!したーい!!…
『…チューしたい。ブぅ~。』
風邪じゃないんでしょ?ただお熱出てるだけなんでしょ?
一人寂しく髪を乾かして 部屋の電気を消して
『おやすみなさい』
背中を向けて眠る京介さんの横に身を沈める。
広い背中に額を添えて腕を廻し いつもよりあたたかなぬくもりを感じて
久しぶりに会えたのに…仲直りしたのに…。
…寂し過ぎるよ…。
***
俺の背中に少し冷たい璃子のぬくもりを感じた
…ズルッ…。
…はぁ?泣いてんの?
すかさず璃子の方に寝返って
『…どうした?』
額に手を当てて熱を確かめるけど俺の手の方がまだ熱くて
『何で泣いてるんだよ。具合悪いか?』
『…ううん…。』
頬をつたう涙を指先で拭って
『じゃ どうしたの?』
『…。』
胸に抱き寄せ落ち着かせるように髪を撫でるけど涙は止まることはない。
額を合わせて瞳を覗くと
…なーんだ 俺だって今日は我慢してんのに
『チューしたいんだろ?』
『…。』
ほらな ビンゴ。一瞬目を丸くして頬を染めて俯いて
『風邪じゃないとは思うけど…うつったら困るだろ?』
『…うつんないもん。』
上目使いで唇を少し尖らせて
…ったく。
日本に帰ってきてから寂しがり屋で少しわがままになった俺の彼女。
…チュッ…
『今日はこれで我慢しろ。』
『ハイ!』
ほんの少し唇を重ねただけなのにもう笑顔になるなんて
『明日は覚えてろよ。』
『…へっ?』
さて 明日はどうやって可愛がりましょうか。
特効薬を胸に抱いて瞳を閉じた。