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あなたの色に染められて

第39章 ハナミズキ


初めて通された広い仏間には座布団が4枚だけ敷かれていた。

お庭の鹿威しが高く鳴り響く厳かな雰囲気のなか 私たちは座布団を横に避けてその脇に座った。

背筋を伸ばし真っ直ぐにご両親に視線を向ける京介さんはとても頼もしく

『結婚することになりました。』

こうして二人ならんでお義父さんとお義母さんに頭を下げることで 結婚は二人だけの問題じゃないんだって改めて感じて

『世間知らずの私ですがよろしくお願いします。』

昨日貰った指輪に視線を送りながら京介さんの横で頭を下げた。

『京介 璃子ちゃん 顔上げて。』

お義母さんも同じような想いでこの酒蔵に嫁いだのかしら

『そんなに堅苦しくしないで? 璃子ちゃん ワガママな京介のことをよろしくね。』

『いえ…こちらこそ…。』

だって お義母さんは涙を拭っていたから。

『母さん これでやっと親の役目も終わったな。』

『そうですね。お父さんお疲れさまでした。』

それはとても穏やかな微笑みでお義父さんとお義母さんはお互いを労うように微笑みだった。


***

『綺麗な月ですね。』

『そうだな 満月とまではいかそうだけど。』

挨拶を終えたあと お義母さんの美味しい手料理とお酒を頂いた私たちは車を置いて月明かりの下 歩いて家路に向かった。

『今度は璃子のご両親に挨拶かぁ。俺 殴られたりしねぇかなぁ。』

私を小さな手をスッポリと包み込むほどの大きな手を持つ京介さんなのに

『殴られると思いますよ。なーんてね。』

私はふざけたつもりだったけど

『洒落になんねぇよ。 おまえ一人っ子で大事にされてたのに俺 酷いことしてたから。』

もうだいぶ時も流れているのに消えることのない大きな二人のキズ。

『もし反対されても何度も頭下げるから。』

寄りを戻してからも何度も私の両親に会って食事もお酒も酌み交わしているのに 京介さんの心のキズは癒えてはいなくて

『大丈夫ですよ。万が一の時は私も一緒にお願いしますから。』

繋いだ指をそのままに腕にギュッとして抱きついて 少しでも私が癒せたらって

でもね 京介さんは強がりさんだから

『オッパイ当たってる。』

『もう!すぐにそうやって!』

なんて話を逸らすけど

一生消えることのないお互いのキズを二人で分け合いたいって それが夫婦なんじゃないかなって

ね?…京介さん

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