あなたの色に染められて
第39章 ハナミズキ
『おはようございます。』
バタンッ
『おはよ。』
幸せすぎたGWも終わって またいつもの日常に戻っていた。
助手席に乗り込むと京介さんは私の顔をジロリと睨み付け
『おまえそのスカート短すぎだろ。』
『そうですか?』
相変わらず スカート丈とデコルテの露出にうるさい彼は
『階段とかあんだから少しは気にしろって言ってんだろ。』
なんていつもの心配性を発動しながら私の手を握りしめた。
今 私の左手の薬指には輝くリングは着いていない。
それは 職場には似つかわしくないほどの輝きっていうのもあったけど 想いのこもったものだから大切なときに身につけたいなって思ってて
『そういえば土曜日で大丈夫そう?』
『はい ママがお待ちしてますって。』
京介さんのご両親にお許しを頂いたので 今度は私のお家に京介さんが意を決してやってくる。
『親父さんは?…って…あぁ やっぱり言わなくていいや。』
『大丈夫ですよ。』
本当は大丈夫じゃないけど…。
GW明けに家に戻ったとき パパとママに指輪を見せて京介さんが挨拶に来たいと告げた。
ママは私に抱きついて大喜びしてくれたけど パパは無言で席を立ち寝室に入っていった。
「最後の足掻きよ。」なんてママは笑って言うけど 私としてはとても複雑だった。
京介さんとは二人でお酒を酌み交わすほどの仲だと思ってたのに
あれから一週間 パパは私とろくに口を利いてくれなくなったから。
『うちの酒を持っていこうと思うんだけど 親父さん大吟醸でいいんだよな? あとは今の時期限定の原酒か それともお義母さんにも飲みやすいスパークリングタイプか…。』
京介さんも少しでも思いが伝わればと色々と気を使ってくれて
『そんなに気を使ってもらわなくても…。』
『そうはいかねぇって。出来る限りのことしないと。』
いつも信号で捕まる交差点。
いつもはおはようのキスをする大切な時間なのに溜め息をひとつ吐いてフロントガラス越しに空を見上げる京介さん。
その溜め息は大切にしてくれてるって証拠なのかな。
そんな私に出来ること…それは空を見上げる京介さんの腕をグイッと引っ張って
『おっと…んっ。』
重ねた唇…大丈夫だよっておまじない。
『私が選んだ人なんですからもっとデーンとしてください!』
わかったか!未来のダンナ様!