あなたの色に染められて
第40章 誰かのために
『なんか 意外だったわ。』
『ホント 璃子はフリフリのドレス着て泣きながらバージンロード歩くって思ってたから。』
夏大会も見事優勝を飾ったこのチームの祝勝会で久しぶり集まったお姉さま方は私たちの結婚式に興味津々なご様子で
『神前式なんて やっぱり京介の家柄のためだったりするの?』
『違いますよ。神前式でうちのお酒を御神酒として使いたいねって 京介さんと話してたんです。』
『“うちの”ねぇ。いっちょ前に。』
理由はもうひとつ。それはあの黒地に牡丹柄の色打掛を着て彼のもとに嫁ぎたいという私の想い。
『じゃあ ウエディングドレスはお色直しで?』
『いや…着ませんよ。』
『…え?』
みんなは時間が止まったかのように私の方を一斉に振り向くけど
『だって一生に一度のお式ですよ?ずっと着ていたいじゃないですか。』
代々伝わる着物を羽織ってお嫁に行けるんだもん。脱いでしまうのなんてもったいない。
『着たくないの?ドレス。』
『そりゃ 着てみたいですけど…。』
『京介は?』
『私の好きでいいからって。』
お姉さまたちは京介さんと私と交互に見ながら大きな溜め息を吐いて何か一言モノを言いたげ。
『璃子…どうして花嫁は真っ白なウエディングドレス着るのか知ってる?』
ここは私の出番とばかりに お姉さまたちの中でも一目置かれているボス姉が口を開いた。
『理由…ですか?』
あまり考えたことはなかったかもしれない。もちろん幼い頃から純白のウエディングドレスに憧れはあったけど
そんな戸惑う私にボス姉はクスクス笑うと
『白ってどんな色にも染まるでしょ?「あなた色に染まります」という誓いの意味を込めてあの純白を着るのよ。』
『…あなたの色に染まります…ですか。』
『まぁ 諸説あるけどね。』
意地悪に微笑むボス姉は私の瞳を覗き込むと
『着たいなら二次会で着たら?私の知り合いにレンタルの仕事してる人がいるから紹介するよ?』
『ホントですか!…あっ…でも…。』
『大丈夫。ヘアメイクは美容師の私に任せて!』
ボス姉の隣に座るお姉さまが親指をグッと立てて
『ありがとうございます!!じゃ京介さんに…』
『ダメよ!』
お姉さまたちは今日何度目かの怪しい微笑みを浮かべると
『サ・プ・ラ・イ・ズ!』
『ハイ!』
私もその怪しい微笑みの中に混ざった。