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あなたの色に染められて

第41章 あなたの色に染められて


『きれいなお庭ねぇ。』

『本当 あの紅葉も銀杏も綺麗に色付いて…。』

あと数日で暦も今年最後の月 師走を迎えるというのに 空は高く暖かい風が吹くこの良き日。

親族控え室のガラス張りの壁の向こうは色とりどりの葉が風に揺らめいて

『あの璃子ちゃんが酒蔵に嫁ぐとはねぇ。』

『本当。あんなに大人しい子だったのに。』

桜湯片手に今か今かと主役を待ちわびていた。


***


『お天気に恵まれて良かったわね…璃子。』

その鮮やかに色付くお庭はこの花嫁の控え室からも望めて

『…うん。』

ガチャ!

『あ~迷ったよ。トイレから戻ってこれないかと思った。』

『もう…パパったら。』

ワガママ言って 家族三人 式までの時間を過ごさせてもらった。

『パパ、ママ…。』

私は立ち上がり真っ直ぐに両親を見つめると

『…璃子…。』

昨夜、私を避けるようにパパは寝室に入ってしまったから

『私を産んでくれてありがとう。』

だから 今 感謝の気持ちを二人にちゃんと伝えたい。

『たくさんの愛情を…ありがとう。』

『ほら…お化粧崩れちゃうわよ。』

私の憧れの夫婦像

『立派に育ててくれて…ありがとうございました。』

『もう…バカね。』

アメリカに旅立つ前のように三人で抱き合って笑顔で手を握りあった。


***


トントントン。

カチャ…。


『…失礼しま…あっ…。』

驚いた。

『あら 京介くん。』

黒の色打ち掛けを羽織って俯くその姿

綺麗…。

待ちきれず 一目会いたくてこの部屋をノックした。

『…京介さん?』

『いや…その…似合うじゃん。』

こういうとき気の利いた言葉ひとつでも伝えられればいいのに…俺って本当にダメだな。

『良かったわね。似合うって。』

朝 ここに来る前に寄ってきた市役所。俺たち晴れて夫婦になったはずなのに

実際にこの姿を目にすると 俺たち結婚したんだって やっと実感が湧いてきて

『京介さんも格好いいですよ。』

『お…俺はいいんだよ。今日はおまえが主役なんだから。』

なんだか急に照れ臭くなって まともに顔も見れない俺。

トントントン

『失礼します…それではお支度が整いましたので…。』

さて 俺たちの新しい一歩。

俺が一生かけて守ると決めた愛しい女と歩みだす大切なこの日。

やっとだな…やっとだよ。

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