あなたの色に染められて
第41章 あなたの色に染められて
揃いの家紋の入った法被と提灯を下げ 酒蔵に代々伝わる祝儀唄を長老達が唄いながら入場すると 会場は一気に華やいだ。
その後ろを紋付き袴の京介さんが歩き 続いてお義母さんに手を引かれ私が入場する。
広い会場に響く祝儀唄に合わせて高砂にたどり着くと大勢の人たちの笑顔が見えた。
神前式は身内だけで厳かに執り行われ 改めて京介さんのもとへ嫁いだのだとお神酒を口にしながら実感した。
たくさんの出席者の方たちのスピーチや余興の合間に行ったのが 鏡開き。
ウエディングケーキの替わりに二人で大きな木槌を持って
『せーの!』
だって酒蔵にお嫁に来たんだもの。うちで一番のこのお酒。列席者の皆さんにも是非 口にしていただきたいじゃない?
升に並々と注がれた名酒を 口を尖らせながら美味しそう口にするその笑顔が高砂から望めれば
『なんか嬉しいですね。』
二人顔を見合わせて微笑みあい 誰も見ていないテーブルの下でそっと指を絡める。
友人が参列しない披露宴。寂しいかなと胸の奥で少し思っていたけれど
これから先 何十年も京介さんが酒蔵に身を置く限り、あらゆるところで力になってくれる方たち。
これからもよろしくお願いしますと言う思いを込めて用意した 美味しいお食事にそれにあった酒蔵自慢のお酒。
この笑顔を見れば やっぱり正解だったんだと思う。
そして最後はそれぞれの両親へ花束贈呈。
『京介くん 璃子をよろしく頼んだよ。』
目を真っ赤に潤ませながら頭を下げるパパとママに京介さんも私も目を潤ませ
『璃子ちゃん これからよろしくね。』
私たちの肩を優しく叩くお義父さんに笑顔で応え。
京介さんは会場の方たちにお礼の言葉を紡ぎ
『未熟な私たちですが 手を取り合って歩んでいきます。今後ともご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いします。』
隣に立つ私は その堂々とした立ち振舞いに心を打たれ
『若い二人をどうか 見守ってやってください。』
列席者の方たちにお礼を述べるお義父さんの貫禄に感心して。
幸せとは たくさんの人たちの力の上に成り立つもの。
『ほら 涙拭いて。』
私はこの大きな背中をずっと見ながらこれからの人生を歩む。
白無垢の上に羽織った 真っ黒に染まった色打ち掛けは森田の家に嫁いだ証し。
…パパ ママ 私は京介さんと幸せになります。
大好きだよ。