あなたの色に染められて
第10章 仲間
『アンダーシャツ取って。』
『これですか?』
彼は更衣室にもいかず駐車場で着替え始めた。
『大遅刻ですね。』
『ホントだよ。』
彼の背中を眺めながら脱いだものをたたんでいく私
…広いなぁ
彼の背中は逆三角形。私はこの広い背中が大好きだ。
『京介さん。』
彼の腰に手をまわし後ろからそっと抱きしめる
『んっ?どうした? 』
ボタンを留めながら首だけ後ろに向ける彼。
京介さんの鼓動が聴こえる。
『ちょっとだけ…このままでいさせてください。』
大好きな彼の匂いを胸に吸い込んで
『…この背中は“私の”ですよね?』
『そうだよ。全部璃子のだよ。』
彼は私の回した手に長い指を絡ませた。
**
『お願いします。』
彼のユニホームの端を掴みながらグラウンドへ入ると
『京介遅い!どこ行ってたのよ。』
彼女はわざとらしく頬を膨らませて京介さんの方へと歩み寄ってきた。
私は掴んでいたユニホームから手を離し俯いてしまう。
『おまえには関係ないだろ。』
遥香さんは後ろにいる私に見向きもせずに 京介さんの隣に透かさず座りピタリと肩を密着させて
『何その言い方~!』
まるで彼女気取り。
…っていうか元カノか
ベンチの入り口で溜め息をこぼすと
『邪魔だっつうの。』
『痛~ぃ!』
触れてる肩を押すように突き放し 持っていたグローブで私の頭をチョンと叩いてグラウンドに走っていった。
その瞬間 私は遥香さんと視線が重なる。
そっか…
彼女はまだ京介さんのこと…
好きなんだ…。
そうなると私はお邪魔虫
…これは一筋縄じゃいかないな
恋愛初心者にもわかるほど 彼女は露骨に気持ちをさらしていた。