あなたの色に染められて
第10章 仲間
『はい、京介。』
休憩で選手がベンチに戻ってきても遥香さんは京介さんにベッタリで
『璃子ちゃんありがとう。』
『いいえ、おしぼりもどうぞ。』
私はほかの選手にお世話をしていた。
気にならない訳じゃない。でも 私からなにかを言うのも大人げない感じで
『遥香は昔からあんなだから。』
『みたいですね。』
周りのみんなが私に気を使ってくれるてる感じだった。
『よし!今日は明日に備えて早めに切り上げるぞ!』
長谷川さんの合図と共に一斉に片付けに取りかかると
『京介~今日はなに食べて帰る?』
…来た
私に視線を送りながら遥香さんは彼を誘う。
…大丈夫
京介さんのことを信じてはいるけど 返事を聞くのが怖くなる。
洗い終わったコップを拭きながら神様に祈るような気持ちで京介さんの言葉を待つと
『佑樹ー!遥香足ないから送ってってやってよ。』
遥香さんは一瞬俯くと
『じゃあ 明日もこの間みたいに朝迎えに来てくれる?』
…この人強い
感心してる場合じゃないけどここまで来ると頭が下がる。
『それは無理だな。』
『どうして?』
『面倒くせぇ。おまえの家遠いんだよ。』
突き放すようで優しい言葉に私の心は音符が走る。
でも、これで確定した。
遥香さんは京介さんとの復縁を望んでいる。
『この間は迎えに来てくれたじゃーん。』
なんて 甘えモードで京介さんの手首を持ちブラブラと左右に振ってる。
分かってるけど二人は絵になるんだ。
『ハァ…』
コップを拭く手に私が小さくため息を落とすと
『大丈夫だから。』
佑樹さんが肩にポンと手を置いて私に声をかけてくれた。
『遥香は一緒に3年間野球やった仲間なんだ。だから無下には出来ないんだ。京介の気持ちもわかってやって。』
そうだよね。元カノの前に大事な仲間なんだよね。
『遥香~!今日明日のおまえの送迎当番は俺だから車で待ってろ。』
『佑樹じゃ嫌だ~』
そう言うと佑樹さんは私にニコリと微笑んで遥香さんのバックを持ち上げた。
…仲間か
佑樹さんとすれ違うように京介さんは私の横でコップを拭き始める。
『今日はハンバーグがいいな。』
『チーズですか。和風ですか?』
『大根おろしたっぷりの和風でお願いします。』
『了解です。』
私も早くこの仲間に入りたいな。