あなたの色に染められて
第1章 出逢い
『男子苦手なのに…ゴメンね。』
帰りの車のなか 男の人が苦手な私と席が離れてしまったことを美紀は何度も謝ってくれた。
『大丈夫。ちょっとビックリしたけど。でもね 離れていいこともあったんだよ。』
私は美紀に京介さんと交わした約束を告げると
『え~?!本当に?よく頑張ったじゃない!エライエライ!』
自分のことのように喜んでくれて
『でね ご飯…付き合ってくれる?』
『もちろん!行くき決まってるでしょ!私が行かなかったら誰が付いてくのよ!』
なんて運転中だというのに私の髪をワシャワシャと撫で回して
『危ないって!前見て!前!』
こんなに喜んでくれるなんて思ってもみなかった。
美紀は私のこういう面倒くさい性格をよく知っていて それでもいつもちゃんとフォローしてくれて
『まったく その一歩にどれだけ時間かかったのよ。もう!嬉しすぎて涙が出そうだよ。』
なんて こんな台詞も言ってくれるほど私のことをずっと見ていてくれた大切な親友で
『ありがとう。でも ご飯食べに行くだけだから…』
『なに言ってるのよ。その「ご飯に行く」っていう 一歩を踏み出すのに22年かかったんでしょ?偉そうに言うな。恋愛初心者!』
『はい…エヘヘ…。』
***
『なんか動き出したね…』
『…うん。そう…かな。』
『無理はダメだよ。』
『…うん。』
美紀はハンドルを握ったままゆっくりと話始めた。
『幸せは 自分で掴むものなんだって 昔ママから聞いたの。だから 動き出さなきゃ幸せは来ないんだって。』
『…そうかもね。』
『今日、璃子と京介さんを見てたら直也が あんな優しい京介さんの笑顔を見たのは初めてだって。ずっと一緒にいた俺さえもビックリしたって。』
確かに営業スマイルとは少し違ったけど…いつもあの優しい笑顔じゃないの?
『幸せになれるといいね。』
『…幸せになれるかな。』
京介さんの優しい笑顔が瞼の裏から離れない。
『…なれるよ。璃子なら。』
私にとっての大きな一歩はやっと踏み出せた大きな一歩
『うわぁ~!もうやめて~!』
『ヘラヘラすんな!ヘラヘラ!』
信号で止まった交差点。
美紀は私の髪をこれでもかというぐらいにグチャグチャにして
『幸せになろうね!』
『うん!なる!』
二人で笑いあった。