あなたの色に染められて
第1章 出逢い
勢いよくドアを開けて飛び出すとあの優しい笑顔がそこにはあった。
『大丈夫?』
その人は大きな体を壁に預けボケットに手を入れ首を傾けてニコリと微笑む。
『…ス…スイマセンっ!』
まともに顔も見れないほど私の心は一瞬で高鳴った。
『璃子ちゃん可愛いからみんなほっとかないんだよ。』
『そんな…』
『アイツ等から守ってあげるからオレの隣に座りな。』
『は…はぃ…』
胸が…心が…初めての感覚
見つめられたその視線を反らすことも出来ないほど惹き付けられるような焦げ茶色の瞳
『行くよ。』
背中にスッと手を伸ばされてエスコートされるように座敷の奥へ進む
『おいそこ邪魔だっつうの。』
『おまえっ!ズルいぞ京介!』
エスコートされるがままに少し狭い彼の隣に自然と腰を下ろすと
『璃子ちゃんそいつが一番危ないぞ!』
『騙されるなよ!食われるぞ!』
この席でもやっぱり大きな声に怯んでしまうけど
『大丈夫。』
私の耳元で囁くように紡がれる彼の言葉に漠然とだけど信じられるような気がしてコクリと頷く。
『何飲んでるの?』
『ウーロン茶を…』
『すいませーん。生1つとウーロン茶!』
テキパキ注文する姿にまたドキッとさせられて
『お酒は飲めないの?』
『いえ…飲み…ます。』
『じゃあ 今度飯行かない?』
さっきの人たちと同じように誘ってくるんだけど
『…え?で…も…』
『もちろん二人じゃなくて。直也と美紀ちゃん誘えば大丈夫でしょ?』
強引なんだけど優しいその物言いに私は自然と首を縦に振り
『じゃあ…美紀と直也さんが一緒なら…』
なんて 今日初めて喋った人の誘いになんの抵抗もなく乗っちゃって
『よし!決まり!日にちと場所は俺らに任せてもらっていい?』
トントン拍子で決めていく決断力の速さに戸惑ったけど
『お…お願いします!』
フッと微笑んだその優しい瞳が私の心を包み込むからかな
素直に首を縦に振れた。
どうした?どうしちゃったの!璃子!
誘いに乗っちゃってるじゃない?
事務所のお姉さまたちが騒いでるあの優しい笑顔に負けたのか?
でもあれは営業スマイルじゃない
…なんだろ
チームの仲間と楽しそうにワイワイと騒いでいる彼の横顔を見ながら素直に思った。
この人はもしかしたら違うかもって…。