あなたの色に染められて
第10章 仲間
『じゃあ 二次会楽しんできて下さい。』
『おぅ、璃子も美紀ちゃんと気を付けて帰れよ。』
『はぃ。お先に失礼します。』
明日も朝から仕事の私たちは一次会で席を外した。
京介さんは今日のために明日の有給を取ってるらしく まだ勝利の美酒に酔いしれるらしい。
『気持ちいいね。』
夜風にあたって酔いを覚ましながら駅までの道を歩いていると
『璃子はスゴいね。』
『何が?』
『あの京介さんを簡単に変えたんだから。』
さっき、居酒屋で話題になった話をぶり返した。
『だって、本当に璃子とお付き合いするようになってすごく丸くなったんだよ?』
確かに球場にいくといろんな人からそう言われる。
その真意を詳しく聞きたくて私も話に乗っかると美紀は直也さんから聞いた話だと前置きして
『歴代の彼女なんてみんな放っておかれてたって。』
『付き合ってるのに?』
『そうよ。飲み会の席でも遥香さんと隣同士座るなんてこともしなかったみたいだし、それ以外の娘なんか球場にも連れてきたことないって。』
『そうなんだ。』
いつも優しく接してもらってる私からは想像も出来ない話
『愛されてんだね。』
『そうかな…』
こんな話を聞いても素直に受け入れられないのは 祝勝会の会場でトイレから戻ったときに私の席に遥香さんが座っていたから
『私が居ない隙に仲良く肩を並べて座ってたのに?』
『それを気にしてたの?バカだなぁ璃子は。』
美紀は笑いながら私の肩に手を回すと
『実はあのとき京介さんがみんなの前でハッキリと遥香さんに言ったのよ。』
美紀はゴホンッとひとつ咳をして京介さんの声色を真似ると
『 「初めて惚れたオンナなんだ」ってサラッと…、あれは格好良かったぁ。』
『…ウソ。』
私の知らない間にまたひとつ京介さんとの絆が深まる。
『直也なんか「京介にやっと心が宿った!」なんて乾杯の音頭取っちゃって。ホントあのときの遥香さんの顔見せたかったなぁ。』
心の傷が少しずつ癒えていく。
『何泣いてんのよ!』
『だって~』
幸せがひとつ増える度に涙を溢す私
『でも油断は禁物よ。遥香さんは一筋縄じゃいかない思うから。アンタは京介さん信じて着いていくのよ!』
『…うん。』
彼となら乗り越えられると思った。
『負けない。』
…乗り越えなきゃいけないと思った。