あなたの色に染められて
第12章 学会
『じゃあ 支度できたら出掛けたいとこあるからロビーで待ってて。』
『わかりました。』
ホテルの部屋のドアを開けると
『……うそ。私一人でこんなに広い部屋?』
先生の学会の手伝いで私は札幌に来ている。
割り当てられた部屋は有名ホテルのツインルーム。かなりの高層階で札幌の町が一望できる素敵な部屋で
『こりゃ。……豪華だわ』
コートやらスーツをクローゼットにしまい とりあえずロビーに向かった。
『遅ーよ。』
先生はソファーからスッと立ち上がりホテルの外へ歩きだした。
着いた先はホテルから程近いデパート。有名なブランドショップにスタスタと入店して店員さんと話はじめる。
『では こちらの方へどうぞ。』
なぜか店員さんに試着室に案内されて 何点かドレスを渡される
『……先生? あのー。』
事態を飲み込めない私は先生とドレスを交互に見続ける。
『いいから 試着しろよ。』
なぜか怒られる私。
『……はい。』
カーテンを閉めて
まずはボルドー色の膝丈のドレスを着てみる。
“すごーい。素材から全然違う!”
カーテンを開けると
『ダメだな。次着て。』
今度はブラックの膝下丈のドレスを着て
『……先生?』
『それだな。
お姉さーん。あとは 靴と少しアクセサリー類も出して。』
『あのー。どういうことですか?』
全くわからない。私はどうして今こんな高級ブランド店で試着をしてるわけ?
『いいから ほら 靴履いてみ。』
そのままピアスとネックレスも付けられる。
試着室を出て もう一度先生に訪ねると
『世話になってる先生の受賞パーティにお前も出てもらうから。リクルートスーツしか持ってきてねーだろ。だから。』
『ちょっと待って下さい!このブランドいくらすると思ってるんですか!私 払えませんから!!』
『うるせーなー。俺の横に並ぶんだからこのぐらいの着てくれないと俺が恥ずかしいんだよ。』
そう言うとお財布からカードをスッと出して店員さんに渡す。
『それでも困ります!こんな高価なもの私には……』
『いいから黙ってろ。もう一軒行くからな。』
『もー。……先生。…お願いしますよぉ』