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あなたの色に染められて

第12章 学会




結局 学会に出席するためのスーツを2着とバックやら靴 アクセサリーとかなりの額を使っていく先生。


デパート内のカフェで一息ついていると


『……先生。やっぱり困るんですけど…
だって 助手って言うか付き添いですよね。そんな私がこんなにたくさん買ってもらって…』


『じゃあ そろそろネタバレでもしますか。』

カップを下ろして 足を組み面倒くさそうに


『とりあえず学会中は俺の彼女って言うか 婚約者のふりして。』


『……はぁ?』

先生は何を言ってるの?

彼女?

婚約者?


『璃子。口空いてる。』

先生はとんでもないことを言い出してるのに冷静にコーヒーを一口飲み


『って ことでよろしく。』


おいおいおい!

『ちょっ……ちょっと待って下さいよ。どうして私がそんな役をやらなきゃならないんですか? 本物の彼女を連れてくればよかったじゃないですか』


『璃子が “お気に入り” だって言ったよな。それに俺 今彼女いねーし。ムリ。』


『……でも でも。私だってムリです。彼女のフリなんて……』


あー。もうどうしよう。

先生はいつまでたっても冷静だし


『別に大したことしねーから。俺の横で “彼女ですー♪” って ニコニコ立ってりゃーいいんだよ。』


『…そんなの…出来ないですよぉ。理由……そう!理由はなんですか?』

『それは あとでわかるよ。』


ハァ…
なんで私が彼女やんなきゃいけないんだよぉ


『…璃子。ご褒美に旨いメシ食わせてやるから。カニのフルコースでもフレンチでも毎日お前の好きな店につれてってやるから。どう?』


うぅー。カニもフレンチも行きたい…

誘惑に完璧に負けてる私。


『……璃子。』


『わかりました!やればいいんですよね?やれば!』


先生はクスッと笑って


『じゃあ 俺の“オンナ”として頼むよ。…璃子ちゃん』


スッと立ち上がってお店を出ると 左腕をくの字に曲げて振りかえる。

『ほら 俺の彼女。』

ん?

先生は私の右手を取り 自分の左腕に絡ませて

『彼女でしょ。』

いつもと違う穏やかな目を細めた


『……は…い。』

先生はさっきまでとは違う歩幅で歩きだす。
鼻唄まで歌ってるし…


私は学会が早く終わって 東京に帰ることだけを考えた。

働くって大変だ……


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