あなたの色に染められて
第12章 学会
会場に戻ってたくさんの人の中から先生を探すと 先生は海外の方と話中で。
私は壁に寄りかかり パーティーの雰囲気を味わいながら先生を待った。
やっぱり別世界だわ。
ここにいるのは努力をして自分の地位を確立してきた人たち。
私みたいに夢を諦めた人じゃないんだろうな。
先生だってそう。あの若さでこの場所に立ててるんだから。
先生がさっきの人と会話をしながら歩いてくる
握手を交わす先生に
『……looking forward to you coming to L.A. 』
L.A.?
『おまたせ。迷子にならなかったか?』
『先生? 今度はロスに行くんですか?』
私の腕をグッと引き寄せて 耳元で
『……キスしていい?』
先生の胸を両手で押して 引き離し
『ダッ……ダメダメ!ここじゃ!ダメ!』
『……ここじゃダメなのね。』
『……あー。違いますよぉ。……もう』
やっちまった……。ダブルでやっちまった。
『じゃあ 予約ってことで。』
さっきまでの大人の微笑みはどこにいったのか。ニカッと笑って歩き出す。
『着替えて 約束のカニ行くぞ!』
『えー! 今からですかぁ?もう 20時過ぎてますよ』
ロビーを抜けてタクシーに乗る
『明日 朝イチで帰んなきゃならなくなったんだよ。患者があんまり状態よくないみたいで…』
『それなら 帰らなきゃ ですね。』
『璃子はまだこっちにいるか?』
『達哉さんと一緒に帰ります。』
『フフっ。今頃 言えるんだ。もういいのに。』
『……しませんからね!』
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あんな遅い時間から 私たちはカニを食べつくし私の夢のような時間は幕を下ろした。
次の朝 早い便で戻り 自宅まで車で送ってもらう。
窓越しにお礼を言って
『ありがとな。また ついてこいよ。……それと 英語の勉強しとけ。』
先生は病院へ向かった。
結局 L.A.のことは流されなんにも聞けなかったけど 私の心に引っ掛かっていた。