あなたの色に染められて
第12章 学会
会場は 今までと比べ物にならないぐらいの大きさと豪華さで 先生から目を離したら迷子になってしまいそうな人の多さで。
『今日は俺の尊敬する先輩の受賞記念なんだよ。顔が広い先生だから 外国の方も著名人も多いんだ。』
『ねぇ。先生。あの人 政治家じゃない?』
『璃子。』
『あっ。達哉さん!達哉さん!』
『……はぁ。お前なぁ。
……じゃあ、次 間違えたら…』
クスッっと笑って 私の耳元で
『……キスすんぞ。』
『えっ!? ……はぃ?』
きっと今の私は真っ赤になってるはず。
そんな私を見て
『ハハハッ。真っ赤だぜ。』
『……無理ですからね!! 私で遊ばないでください!』
ケラケラと笑いながら 歩き出したのと同時に先生は私の手を握ってくる
『ちょっ!……ちょっと!』
『1回間違えたお仕置きです。』
冷たくあしらうんだ。
『そんなぁ……』
私の顔をチラッと覗いて……
そう。随分とご満悦の表情で
手を繋いだまま たくさんの人たちと挨拶を交わして 彼女を演じていく。
でも 私にとってはとても貴重な体験だった。医学用語はわからないけど 諦めていた英語がこんなに活かされるなんて。
『疲れてないか?』
先生は私を気にしてくれて 飲み物を渡してくれる。
『少し ここで待てる?話したい人がいるんだ。』
『いいですよ。じゃあ 私 ちょっとおトイレに行ってきます。』
『迷ったらすぐに連絡しろよ。』
繋いでいた手がほどかれるのが一瞬 目に入った。一瞬のはずなのに…
どうしてだろう。スローモーションのように見えたんだ。