煩悩ラプソディ
第11章 始めの一歩/SA
「よし…と」
ポテトサラダにミニトマトを盛り付け、ふぅと息を吐いた。
狭いテーブルに並べた渾身の料理たちを眺めて思わず頷く。
うん、我ながら上出来。
一週間前、かずと潤君が入院している小児病棟で一足早いクリスマス会があった。
体調の良い子はクリスマスの前後に一時帰宅が認められているから。
二人ともここ最近はすこぶる体調が良く、これまでも何度か自宅に戻れていた。
そこで今回は、長めに五日間の一時帰宅を許可してもらった。
そして、クリスマスイヴの今日。
この狭い我が家に、櫻井さんと潤君を招いてクリスマスパーティをすることになったのだ。
かずは帰宅してきた昨日から楽しみで仕方なかったようで。
「おとー、みてー!」
百円均一で調達してきたクリスマスのオーナメントや折り紙で作った星を、昼間からせっせと部屋に飾り付けていた。
「お、いいねぇ!かず、上手だね」
「いいー?じゃあこれもはるっ」
ベランダの窓ガラスに不揃いに貼られた星たちの横に、クレヨンで描いた自作のサンタらしき顔の飾りをペタペタ貼り付けだした。
そんな小さな後ろ姿を見つめて思わず笑みがこぼれる。