煩悩ラプソディ
第1章 それはひみつのプロローグ/ON
「…俺はぁ…
大野さんのことがぁ…
す…、」
「おはよーざいまぁーす」
ガチャっと軽快な音と共に、聞き慣れた高い声の男がためらいもなく入ってきた。
二人して一斉に声の方を見遣る。
「…あれ?早いね二人とも。
あ、もしかしてオレ時間間違っちゃった!?」
入ってくるなり、一人で喋りながらこちらに歩み寄ってくる。
…あいばかさん。
今いいとこだったんですよ…。
どうしてくれんのよ、俺の告白!
大野さんは恨めしそうに相葉さんを見てため息を一つ吐いた。
「え、リーダーそんな怖い顔してどしたの?
あれ?なんか目ぇ赤くない?
…あ、にのお前なんかした?」
いやお前だよ!
なんなのよそのタイミングの悪さは!
「あ!DS壊れてんじゃん!どしたのこれ。
あ…もしかしてケンカ?
もう二人ともいい大人なんだからやめてよね〜」
床に落ちたゲーム機を拾いながら、相葉さんが笑いつつ勝手なことをベラベラ言い出した。
同じく、恨めしく相葉さんを見遣ってハァと息を吐く。
…あぁ、そっか。
これがいつもの俺たちなんだよね。
さっきまでの夢のような時間からいつもの日常に引き戻される。
幸せの余韻に浸るには、場所が悪かったってことにして。
程なくして他のメンバーも楽屋に揃い、いつも通りの風景が広がる。
なんだかんだでやっぱりこの空間が一番心地いい。
こうして5人で居られることが、何にも代え難い大切な時間だから。
それと…
この人の隣は今日から俺の優先席にしよう。
まぁ、たまになら譲ってあげてもいいけど。
台本を眺めながらなんとなくチラっと横目で大野さんを見ると、同じタイミングでこちらを見た大野さんと目が合う。
そんな事すらも恥ずかしくて、付き合いたてのカップルみたいで二人して顔がニヤける。
…あ、そうだ。
「…大野さん、」
「ん?」
顔を近づけて、そっと耳打ちをした。
"すきだよ"
離れると、バッとこちらを向いて目を見開いている。
みるみる顔が赤くなるのがおかしくて、笑いを堪えながらすっかり冷めてしまったコーヒーを啜った。
大好きだから。
これからも…ずっと。
end