煩悩ラプソディ
第12章 権力ハニー/AN
「えっ!ちょっ待ってよ、」
慌ててにのの腕をがしっと掴んでぐるっと体を向き直した。
「…なによ、あとでいいんでしょ」
口を尖らせてじっとりとした眼差しを向けるにの。
あぁもう、ほんと…素直じゃないよね。
…しょうがない、ここは折れますか。
「…かまって?にのちゃん」
未だ怪訝な顔のにのの頭をさわさわと撫でながらお伺いを立ててみれば。
「…しょうがないなあ」
俯いてふふっと小さく笑い、そのまま俺の胸にぽすっと抱きついてきた。
腰にぎゅっと腕を巻きつけて、預けている肩口にふふふっと笑う声が伝わる。
「…なに?おかしいの?」
「…んーん、なんでもない」
目下のつむじが小さく揺れて、柔らかい髪と大好きな匂いが鼻をくすぐる。
「…ねぇ、今日はかまってほしい日?」
にのの髪に頬をうずめながら問いかけた。
「いや…かまってあげたい日」
顔を少し離してちらっと見上げ微笑む。
「…ほんと素直じゃないんだから」
「…んふふ」
口を結んで含み笑いながらそっと目を閉じるから、その薄い唇に自分のそれを重ねた。
ほのかに香るビールの味。
惜しみつつゆっくり唇を離すと、薄茶色の潤んだ瞳が揺れている。
「…つづきする?」
「…べつにいいけど?」
そんな誘うような顔で強気に言われても、と心の中で苦笑しつつまた唇を重ね合わせた。
こうやっていつも振り回されるけど、最後は決まって俺に委ねてくれる。
にのの手のひらで上手いこと踊らされてるのは自覚済みで。
主導権を握ってるつもりで、握らされてるんだ。
これが、俺たちのカタチ。
これからも振り回してね?
俺の可愛いハニー。
end