煩悩ラプソディ
第15章 或いはそんな休日/AN
楽屋に入るなり予想通りの反応を見せるメンバーたち。
みんな目を丸くして俺を見ている。
…んじゃなくて、横にいるコイツを驚いた顔で見つめている。
「おはよーざいまぁす」
満面の笑みを浮かべながら、横にいるソイツの手を引いて足を進める。
翔ちゃんは俺とソイツを交互に見ながら、眉間に皺を寄せ口を開けて驚きの顔を浮かべ。
リーダーは物珍しそうに近寄ってきて、目をしぱしぱしながら半開きの口で感嘆の声をあげ。
松潤は「確認なんですけど、隠し子じゃないですよね?」と、腕組みしてからかうようにそう言う。
「違うよもう。ほら、怖がるから」
繋いでいた手から離れ、苦笑いでメンバーをあしらう俺の脚にしがみつき潤んだ瞳で見上げてくる。
数日前、親戚から「子どもを預かってほしい」と連絡が入った。
俺の職業を十分承知の上で、それでも誰にも頼めないからと再三の申し入れに仕方なく承諾することになり。
元々子どもは好きな方だし、明日はオフだから今日を凌げば大丈夫だろうってことで。
名前は"優太"。
歳は4つ。
そして、なぜか俺の幼少時代に異常なまでによく似ている。
顔はもちろん、細くて小さい体つき、おまけに内気な性格までもそっくりで。
そんな俺の生き写しのような優太に愛着が湧かない筈がなく、メンバーには内緒で仕事場に連れてきてしまったというワケだ。
「はいはいも〜あっち行って!
怖いね〜このおじさんたち」
脚にしがみつく優太の頭を撫でながら、取り囲むメンバーたちを手で追い払う。
そこへ、前の仕事で入りが遅れていたにのがやってきて火事場見物の野次馬みたいにひょこっと顔を覗かせた。