煩悩ラプソディ
第15章 或いはそんな休日/AN
「…え、隠し子?」
わざとらしく驚いた顔で、口元を覆いながら輪の中へ入ってくる。
「だから違うってば。親戚の子どもをさ、預かることになっちゃって」
また突然現れた知らない大人に、優太はますます俺の脚にギュッとしがみついて後ろへと回ってしまった。
「てかめっちゃ似てんね、相葉さんに」
言いながらしゃがむと、脚にまとわりつく優太の顔を覗き込む。
「怖くないよ〜?
優しいおじさんだよ〜?」
気持ち悪いくらいニッコリ笑って、優太に問いかけるにの。
ふふ、子ども好きじゃないのに無理してやんの。
「よし優太、みんなと仲良くできる?
あ、お名前はねぇ…」
みんな優太の側にしゃがんでくれたから、後ろに隠れる優太を抱き上げて前面に立たせた。
「翔ちゃん、大ちゃん、潤くん…」
一人ずつの名前をゆっくり言うと、優太がぽつりぽつりとその後に続いて反復する。
「にのちゃん、」
にのを指してそう言うと優太がにのをジッと見つめた。
それを受けて、またニッコリと笑いかけながら両手を広げて"おいで"のポーズをとるにの。
「ふふ、無理だよ。優太人見知りだもん」
わざとらしいにのの態度に苦笑しつつ、優太を抱きかかえようと腕を伸ばした瞬間。
「…にのちゃん!」
にこっと無邪気に笑いながら、優太はにのの胸に飛び込んでいった。
当の本人は予想外の事態に驚きの声を上げながら、体勢を崩し尻もちをついてしまっている。
俺を含めそこにいたメンバー全員、目の前の信じ難い光景に己の目を疑った。
尤も、一番びっくりしていたのは本人だったようで。
「…え?」
嬉しいような困ったような複雑な顔でこちらを見上げてきた。
「…どゆこと?」
「いや、こっちが聞きたいんだけど…」