煩悩ラプソディ
第17章 笑顔に紛れた大怪獣/OAN
その音に、三人ともピタッと動きが止まった。
チラッと見上げると、焦った顔の相葉ちゃんの横で口を覆ってぎゅっと目を瞑るにの。
くっそ、マジか。
もうちょっとだったのに。
目の前で大きく震えるにののソレを見て、急にかわいそうになってきた。
あーあ…時間切れか。
まさにおしおきだな、こりゃ。
なんか一気に現実に引き戻されたような感覚がして興醒めしてしまう。
静かな部屋にまた"コンコン"と遠慮がちなノックの音がして、相葉ちゃんを見た。
「…大ちゃんごめん、俺立てない」
にのの下でその体を支えてる相葉ちゃんが申し訳なさそうに言うから、唯一ちゃんと服を着てる俺が扉に向かう。
"はい"と返事をしながら扉の前まで歩いて行くと、カチャっと先にドアレバーが下がって薄く扉が開いた。
そこにはマネージャーとTV誌の記者の人、カメラマンの人がぞろっと居て。
『今日の撮影は機材の故障で中止』
と告げられて、深々と頭を下げられた。
…え、中止?
何度も頭を下げる記者の人に笑顔で対応しながら、じわじわとこみ上げる昂揚感をなんとか隠した。
マネージャーにちょろっと話をしてから扉を閉めて内鍵をかける。
ソファに戻ると、未だ辛そうな顔のにのの頭を相葉ちゃんが優しく撫でていた。
「何時からだって?」
「…中止だって」
「え?」
「撮影ないんだって、今日…」
緩む頰を堪えきれず最後の方は思わず笑ってしまった。
驚いた相葉ちゃんの顔。
にのも薄く目を開けてこっちを見て。
「振り考えたいって言ったらさ、ここ使っていいって…ふふっ」
マネージャーも帰らせた。
相葉ちゃんに送ってもらうっつって。
相葉ちゃんを見ると、みるみる内にニヤけ顔になってって。
傍らに立ってにのの頭をさわさわ撫でながら微笑んだ。
「…にの、続きしよっか」